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第20章 ノックスの十戒7(1)

みなさんは、”ノックスの十戒”をご存じでしょうか。


ノックスの十戒とは


【イギリスの聖職者・神学者で推理作家でもあるロナルド・ノックスが、1928年に編纂・刊行したアンソロジー“The Best of detective stories of the year1928”の序文において発表した、推理小説を書く際のルール】

(参考文献:Wikipedia)


のことであります。


我が『私と猫と迷探偵と』も、このノックスの十戒を順守して書かれています。

例えば・・・・・・


ノックスの十戒

7.変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない。




現在、現在、あるところに、青山スフレさんとエ・クレアさんが住んでいました。

スフレさんは山へしばかれに、エ・クレアさんは川へ選択に行きました。


スフレさんは先日、山に初日の出を見に出かけました。11月中旬の事です。ええ。スフレさんは早起きが苦手なので、日の出を見るのはこれが今年最初。スフレさんにとっては初日の出です。

そこでなんとクマに遭遇したスフレさん、見事な一本背負いでクマを秒でのしてしまいました。

しかし、このクマ、近所の動物好きのご老人、でん 誤憲ごのりさん、通称トビハゼさんのペットのクマ吉くんだったのです。

クマ吉君は、スフレさんが落とした白い貝殻の小さなイカリング(食べかけ)を届けてくれようとしたのですが、スフレさんはあろうことか、お礼に歌うどころか、一発のKO。

トビハゼさんは怒り心頭で、本日、スフレさんは謝罪へと出かけたのです。

たぶんしばかれます。


エ・クレアさんは、市販されていない川魚のジャーキーを自分で開発しようと思い立ち、「鮎ジャーキー」「イワナジャーキー」「ヤマメジャーキー」のどれを選択すべきか、実際に魚を釣って確かめようと、川へ出かけています。





「・・・・・・・・ヤバイ・・・・・・非常にヤバイ・・・・」


RR探偵事務所。1人残されたタルト所長。

何やら危機的状況に陥っているようです。どうしたんでしょう。


「・・・・さっきキッチンに置いてあったスフレチーズケーキを食べたんだが・・・」


はい。確かにパッケージに『スフレチーズケーキ』と書かれたものがキッチンにありました。


「・・・食べたら、普通のチーズケーキだったんだよ」


普通のですか。ふわふわ食感じゃなかったんですかね。


「でもめちゃくちゃうまかったから、全部平らげてしまったんだよ」


スフレタイプじゃなくても美味しかったんですね。


「良く見ると、『スフレ』の部分だけ手書きだったんだよ」


おぅ?・・・・ということは?


「これ、スフレ君がお取り寄せして、食べるのをめちゃくちゃ楽しみにしていた、有名店のチーズケーキだったんだよ!勝手に食べられないようにパッケージに自分の名前を書いてたんだ」


なぁ~にぃ~~?


「やっちまったよ!」


男は黙って・・・・・すぐに同じものを取り寄せろ!!


「無理だ。大人気で予約4年待ちらしい」


・・・・・・ああ・・・・

『探偵自身が犯人であってはならない』

・・・・ここまできて十戒が破られるとは・・・・



コンコンコン コンコンコン コンコンコン コン


「失礼します」


ノックを10回して入ってきたのは借金取りではなく、小学生の男の子です。

今どき珍しい、いわゆる”坊ちゃん刈り”で、太い黒縁のメガネ、短パンにサスペンダー、背負っているランドセルは茶色で横長なお洒落タイプ、きっと有名私立小学校指定の物でしょう。


「こちらRR探偵事務所でしょうか」


なんだかとても礼儀正しい少年です。

佇まいも堂々としたものです。


「あ・・ああ、そうだけど、どうしたの、僕。迷子?」


探偵事務所に一人で来る小学生はまずいません。

タルト所長もどう接していいか探り探りで会話します。


「いいえ。迷子ではありません。こちらに用があってきました。あなたが所長の赤岩さんですか?」

「・・・え、ええ。そうですが。どういったご用でしょうか・・・」


思わず敬語になるタルト所長。


「あなたの実力を試しにきました」

「・・・・はい?」


「あなたが世間でもてはやされているほどの実力のある探偵かどうか確かめに来ました」

「・・・・ええ・・・と、世間でもてはやされている覚えが全くないのですが?」


「ははは。ご謙遜を」

「いやいやいや。謙遜してないです。・・・それより、ちょっと今、十戒と命の危険が迫ってまして・・・」


「とにかく、自分と推理対決をしていただきます!」

「いやいやいや。ホントに今それどころじゃ・・・・お子様の遊びに付き合ってる暇はな・・」


「お子様呼ばわりしないでいただきたい!オジサン!!」

「豹変ぶり!・・て、いやいや、僕はまだオジサンという歳ではな・・・」


「では、第1問!」

「いきなりどうした?!」


「オジサンかどうか度チェックです」

「オジサンかどうか度チェック」


「ひらがなの『そ』の画数は?」

「2画」


「はい、オジサン指数1ポイントゲットです」

「ええっ?!」


「『そ』は1画のひらがなです。では第2問!日本では三陸海岸や若狭湾などで見られる、せまい湾が複雑に入り込んだ沈水海岸地形の事を何というか」

「リアス式海岸」


「オジサン指数2ポイントです。”式”は古いです。他に『高床式倉庫』も今は『高床倉庫』もしくは『高床の倉庫』が主流です。さて、第3問。日本の工業地帯名を答えなさい」

「ああ、四大工業地帯だね。京浜・・・」


「オジサン指数3ポイーーーーント!!今は三大工業地帯です。・・・はぁ・・・このままでは1億ポイントを超えてしまいますね」

「そんなに付き合ってる暇、ホントにないよ?!」


「わかりました。では、サービス問題です。第4問。気圧の単位は?」

「ミリバール」


「・・・・冗談ですよね?オジサン指数103ポイント」

「いきなりのオジサン指数インフレ!!」


「第5問。最終問題です。この問題はオジサン指数10億ポイントです。大学に入学を志願する者の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定することを主たる目的とする、日本の大学の共通入学試験と言えば何?」

「共通一次」


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


「正気ですか?」

「・・・い、いや、冗談だよ。セ、センター試験だよね」


「・・・・ふざけてませんか?オジサン指数10億プラス5兆ポイントゲットで、トータル5兆10億103ポイント。ランク『生きた化石』です」

「メタセコイア!」


「・・・さて、エキシビションはここまでにして、本題に入りましょう」

「いやいや、だから、ほんっっとうにそんな暇ないんだってば!十戒とオジサンの命がかかってるんだから」


「さっきから何ですか、十戒って。モーセですか?」

「あ・・いや・・・そっちの十戒じゃないんだけど、下手すりゃ海が割れるかも。とにかくなんとかしなくちゃ・・・」


「もし推理対決に赤岩さんが勝ったら、この、人気お取り寄せスイーツランキング10年連続1位”スッテラ奥さんのスイーツ工房”のチーズケーキを進呈しますよ。予約4年待ちの超人気商品だそうですよ」

「ぜひやらせて下さい!お坊ちゃま!!!!」

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