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第17章 ノックスの十戒5(1)

みなさんは、”ノックスの十戒”をご存じでしょうか。


ノックスの十戒とは


【イギリスの聖職者・神学者で推理作家でもあるロナルド・ノックスが、1928年に編纂・刊行したアンソロジー“The Best of detective stories of the year1928”の序文において発表した、推理小説を書く際のルール】

(参考文献:Wikipedia)


のことであります。


我が『私と猫と迷探偵と』も、このノックスの十戒を順守して書かれています。

例えば・・・・・・


ノックスの十戒

5.主要人物として「中国人」を登場させてはならない。



「マイドー 中華飯店『昇竜軒』デスー 出前 届ケニ来タアルヨー」


「ほらぁ!!」

「まあ、こうなることはある程度読者さんも予想がついただろうね」

「ベタベタのベタだニャン」


RR探偵事務所のお昼時をだいぶ過ぎた頃。

事務所内には簡単なキッチンが備え付けられていて、スフレさんがみんなの食事を作ることもあるのですが、本日は炊飯器で昼食用にパンを焼こうとしたスフレさんが分量を間違えてしまい、炊飯器を爆発させてしまったので、近所の商店街にある中華料理屋さんの出前を取ったようです。

ちなみに、事務所にはシャワー室や仮眠室もあるので、タルト所長は仕事で忙しい時など、事務所に泊まることも結構あるようです。


「ゴ注文ノ 満漢全席ネー」

「頼んでない、頼んでない!!」


「コレ 請求書アルネ マイドアリー」

「ぎゃーーーー!!!」


スフレさんが請求書の額面を見て卒倒しそうになっています。


「ちょっと待て。そんなことより、登場してしまったこの人物をどうするか・・・」


セレブなタルト所長にはこの額の請求書も”そんなこと”になるのでしょうか。


「ニャニャ、出前のお兄さんなら”主要人物”ではニャいからギリギリセーフなのニャ」


「ア ソウソウ ワタシ 赤岩探偵ニ 依頼シタイ事ガ アルアルネー」

「まさかの依頼人!!」

「依頼人って”主要人物”になるんじゃ・・・・!!」


「何ノ事アルネ?」

「い、いや、こっちの話で・・・ええと、あなたのお名前は?」


張沐辰チャンムーチェンアルネ」

「・・・・中国ご出身の方・・・ですよね?」


「いいえ。ジャペン人です。本名は田中権兵衛たなかごんべえ。ゴリゴリのジャペン人です。ビジネス中国人やってます」

「・・・・・・・」

「セーーーーーフ!!!かんっっぜんにセーーーーーフ!!」


「・・・・で、権兵衛さん。ご依頼とは」

「ブー 権兵衛 呼バナイネー チャンアルヨー」


「・・・・承知しました。チャンさん、改めてご依頼を伺います」

「コレ 見テホシアルネ」


田中権兵衛・・・もとい、チャンさんはポケットから折りたたまれた厚めの紙を取り出してタルト所長に手渡します。


「開いてみてもいいですか?・・・・えと・・・1、2、3、4、5・・・ん?何回折ってるんだ、これ?・・・・・・・15、16、17・・・・27、28、29・・」

「ポケットに入るレベルじゃない!そもそも物理的に不可能!!」

「しかもそれ、ポスター用の厚い紙ニャ」


「ソレ ウチノ店ノ 宣伝用ポスタアルネ」


タルト所長がやっとのことで広げた紙は、チャンさんの言葉通り、中華飯店『昇竜軒』の店内用ポスターでした。

『大人気 爆裂タンタンタン麺 980円』の真っ赤な文字が踊り、中央にはこれまた真っ赤なスープに野菜がてんこ盛りのラーメンが入った丼をこちらに差し出している中華風の白いコック服を着た男性の写真がどどーーーんと暑苦しく載っています。


「『タン』1つ多くないか?」

「コレ タンタン麺ト タン麺 組ミ合ワセタ ウチノ 一番人気メニューアルネー」

「タン麺って、確か日本発祥だったような・・・・」


タルト所長は、この和中折衷の人気メニューに食いついたようですが、実は注目すべきはそこではないのです。

・・・て、いうか、これをスルーして他のところツッコむか?という話なのですが、この写真の男性の頭の上の部分には油性ペンで絵が描かれているのです。絵というかイラストというか、要するに落書きです。

どんな絵かというと、わたくしにはよくわかりませんが、たぶんソフトクリームの上側だけ?みたいな。

コーンの部分を描き忘れたんでしょうかね。わたくしにはよくわかりませんが。

茶色の油性マジックで描かれているようなので、たぶんチョコ味なんでしょうね。わたくしにはよくわかりませんが。

ソフトクリームの上には湯気のような3本の波線が描かれていますが、ホットソフトクリームなんですかね。今流行のスイーツなんでしょうか。わたくしにはよくわかりませんが。


「コノポスタ 写ッテルノ テンチョアルネ」

「てんちょ?」


「あ、店長です」スン

「・・・・そうですか」


「テンチョ 写真 誰カ 落書キシタアルネ」

「ほんとだ。がっつり頭の上にうn・・・・ぐおぼごっっっ」


「スフレ君!今、何を言おうとした?!せっかく”地の文さん”がぼかしにぼかしてくれたのに、空気をよみなさい!!」

「オブラートでぐるぐる巻きにしたのが台無しニャ」


スフレさんは、満漢全席の品々の中にあった熱々小籠包を喉の奥に突っ込まれました。


「大丈夫かニャ」

「ああ。出前や会話に時間かかってるし、さすがにもう冷めてるだろう」

「むぐぉぉぉぉ!ふっふぐ!!ふっふぐ!!!」


「『窒息』って言ってるような気がするニャ」

「『ふぐが食べたい』じゃないのか?」

「ウチノ 小籠包 アツアツ 提供スルアル 携帯コンロ デ 蒸シ続ケテルアルネ 出前デモ 手ヲ 抜カナイアルヨー」


さて、このポスター、従業員休憩室の壁に貼ってあったものですが、店の営業時間が終わった直後には異変がなかったことを店長が確認しています。


「コレ 店ノ中 貼ル物 ケド 余タカラ 休憩室ニモ テンチョ 貼タアルネ」

 

そして、店員全員で片づけをしたりまかないの夕食を食べたりして、店長を除く店員が全員帰宅した後、店長が落書きに気づいたようです。

つまり、犯人は店員の中の誰かということになるです。

まあ、そもそも従業員休憩室にお客さんが入り込むことは考えづらいので(落書き以外の、盗難等の被害はありませんでした)、必然的に怪しいのは従業員という事になるのですが。


「テンチョ メチャ オコテルネー」

「でしょうね。しかしまた大人がこんな幼稚な悪戯をねぇ・・・」


「テンチョ メチャ 嫌ワレテルネー」

「・・ははは・・・」


「チャンさんは犯人を見ていないのかニャ?」

「ハイ ワタシ ワカラナイネ」


「その時、お店に店員さんは何人いましたか?」

「テンチョ以外デハ ワタシ 含メテ 5人アルネー 今日 テンチョ イナイケド 他全員 店イルネ 会イニ 来ルカ?」


「ええ。現場も見たいですし、お店にうかがって皆さんに詳しい事情をお聞きましょう」

「レッツゴーニャ☆」


チャンさんとタルト所長、エ・クレア助手は早速、中華飯店『昇竜軒』に向かいます。

・・・・・・・・・・・

・・・・・・ん?”何かお忘れではありませんか”って?

・・・・う~ん。そうですか?特に重要なことを忘れている覚えはありませんが。。。。

気のせいでしょう。

では、張り切って調査開始いたしましょう!!

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