第12章 ノックスの十戒2(1)
みなさんは、”ノックスの十戒”をご存じでしょうか。
ノックスの十戒とは
【イギリスの聖職者・神学者で推理作家でもあるロナルド・ノックスが、1928年に編纂・刊行したアンソロジー“The Best of detective stories of the year1928”の序文において発表した、推理小説を書く際のルール】
(参考文献:Wikipedia)
のことであります。
我が『私と猫と迷探偵と』も、このノックスの十戒を順守して書かれています。
例えば・・・・・・
ノックスの十戒
2.探偵方法に、超自然能力を用いてはならない。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お3人さん、何か問題でも?
「いや・・・・」
「ニャニャ・・・」
「あの『我等の前に立ち塞がりし(厨略)なんとかリメンバーーー!!』ってやつは、超自然能力ではないのですかーーー???」
「あっさり聞いちゃったよ。・・・・スフレ君は自由でいいな」
「彼女は自由の代償に何かすごく大切な物を失くしてるようだけどニャー」
”探偵方法”に、超自然能力を用いてはならない、ですからね。
あれはただの回想ですし、そもそもわたくしは”天の声”もしくは”地の文さん”であって、”探偵”ではありません。推理は一切いたしません!私、推理はしないので!
ほら、くだらないことを言ってないで、お仕事しましょう。所長。
「今回の事件はニャンですか?」
「ああ、今回は商店街の『逆流say!食堂”縁”』さんからの依頼だ。事件というほどのものではないよ」
逆流say!食堂”縁”は、商店街の入り口にある、デカ盛りが人気の大衆食堂です。
毎年、1月21日にこの食堂で開催される『巨大アメフラシフラッペ祭り』には町内外を問わず、たくさんの人々が集まります。
アメフラシフラッペはこの祭り限定メニューで、重さは5.6kg(器の重さは除く)、みぞれ・イチゴ・メロン・レモン・ブルーハワイの各シロップがブロックごとにかかっています。
フラッペはカキ氷の上にアイスクリームや果物をのせたもの、というイメージがありますが、アメフラシフラッペはカキ氷オンリーです。一切の『舌休め』を認めません。
いいえ、もちろんアメフラシは入っていません。
ふふふ。さすがにそんな気色の悪い食べ物をお客様に提供したりはしませんよ、奥さん。
このフラッペを完食して店から出てきたお客さんは全員、危険を感じた時のアメフラシのような唇をしているところからこの名前は付けられました。
「紫の汁が出てるの?!」
「危険すぎる!!」
「やっぱり気色悪いニャ!」
『巨大アメフラシフラッペ祭り』は、このフラッペをいかに速く食べきるかを競うお祭りです。
優勝者はアメフラシフラッペ(8400イィェン)が無料になります。
・・・・いえ、ホントに毎年大盛況なんですってば。
地球の日本からも挑戦者やギャラリーがたくさん来ているんですよ。
え?アース星もジャペン国も聞いたことがない?
そもそもどうやってこの星に来るのかですって?
「みんな、”招待券”で来てるな」
「私も聞いたことありますよ。日本の有名な祭りで”招待券”が配られてるって」
「『巨大アメフラシフラッペ祭り』より超有名な祭りらしいニャ」
皆様も日本人でしたらご存じのはずでしょう。
何しろ日本で1番有名なお祭りらしいので。
「国を挙げての祭りと聞いてるな」
「毎年行われるんでしたよね」
「しかも日本各地でやってるらしいニャ」
ええ。そうです。その祭りです。
日本の皆さんに今更説明する必要もないかと思われますが、
外国の方々もいらっしゃるかもしれませんので一応触れておきますね。
・・・といっても、わたくし、前にも申し上げましたが、あまり日本については詳しくないので、
日本の観光客の方からお聞きした事の受け売りになるのですが・・・
その祭りは毎年春に行われる、
小麦粉に砂糖とかイーストとか水とかバターとかを混ぜて、捏ねくったものをオーブンで焼いたものを祀る?祭る?祭りだとかなんとか・・・
その祭りの参加者にはもれなく白い鈍器が授けられるというご利益があるらしいです。
「鈍器じゃなくて陶器でしょ」
「バイオレンスとは無縁の祭りのはずだよ」
「ていうか、陶器でもなく強化ガラス製じゃないかニャ」
原材料はともかく、その授けられた祭りの白い神具(皿)に、ある確率でアース星への招待券が貼り付けられているそうなんです。
ものすごーーーーーく低い確率のようですが。
みなさんも祭りにご参加の際には確認してみて下さいね。
「・・・・ところで、今回の依頼はニャンにゃのニャ」
おっと、そうでした。
ついつい脱線してしまうのがわたくし”地の文さん”の悪い癖☆
「今回の依頼は、”落とし主探し”だ」
はい。つまりは”忘れ物をした人探し”ですね。
先日、逆流say!食堂”縁”の営業時間が終了した際、お座敷席の座布団の下からネクタイピンが出てきました。
閉店後の掃除をしていた店員さんが見つけたのですが、この食堂はいつも行列ができるほど満員で、客層もサラリーマンが多いため、誰の物かはわかりません。
これが商店街の反対側の入り口付近にある『反転斑点飯店』での出来事だったら、客は1日に2・3人、それも常連客だけなので、持ち主を探すのは容易であるのですが。。。
一応、”お忘れ物”と書かれた箱に入れてレジの前に置いていたのですが、名乗りを上げた人はいなかったそうです。
「とりあえず、”縁”に行って、ネクタイピンの現物を見てみよう」
「OK牧場!」
「今回は難しそうな案件だニャ」