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シーとピンク色のテロリスト  作者: ユッキー


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77/77

SCENE75



 前首相の国葬は、年が明けた来年1月〇〇日、日本武道館にて執り行われることが公表されていた。

 すなわちその日は、露巳(ロミ)代表ら「株式会社小さな人たち」こと《小さきものたち》が、参列する前首相と関係の深かった要人を狙ったテロを計画している日でもある。そこで露巳(ロミ)代表ら《小さきものたち》は、巨大な闇の力「ビックブラザー」と繋がりのある人物を殲滅(せんめつ)させるつもりなのだ。 ── あの夜、雲透(くもす)きの春の光のような笑顔で頷き、ビル群の照明で薄められた都心の曖昧な紺碧色(こんぺきいろ)の夜空を見上げ、その計画をワタシに知らせてくれた春子さんとは、その後音信不通のままだ──


 しかし侏儒(こびと)が伝えてくれた千尋(チヒロ)ちゃん ──自主したため警察機関に収監されている── からの言伝(ことずて)は、《蒼い夜空に白い一等星があらわれるのを待っていて!》というものだった。果たして露巳(ロミ)代表はその言伝(ことずて)をどう解釈したのだろう。


 都心の夜空に星を見つけることはむずかしい。もはやだれも夜空を見上げなくなった。でも千尋(チヒロ)ちゃんは《白い一等星があらわれるのを待っていて!》と言伝(ことずて)を残した。

 はたしていつになったら白い一等星があらわれるのだろう。露巳(ロミ)代表らが計画する前首相の国葬でのテロ実行の日まで、白い一等星はあらわれるのだろうか? もうすぐ年が明けるというのに……



 それともうひとつ、侏儒(こびと)千尋(チヒロ)ちゃんの言伝(ことずて)を伝えてくれたあの夜、ワタシの心奥(しんおう)に深く刻まれたこと……


 春子さんと銀座で夕食をとったあと、ふたりでSHIBUYA SKYに行った。

 屋上展望台SKY STAGEの一段高くなっているヘリポートの中心に立った春子さんは、星のない夜空を見上げ、豊潤なロングヘアを(なび)かせながら、ワタシをSHIBUYA SKYへ誘った理由として不思議なことをいった。


 ──近い将来、人類が滅亡へと向かう時、宇宙の中心にいるひとつの小さな生命が、この場所へ降り立つのです!


 近い将来? 人類が滅亡へと向かう時? そんな日がもう間近に迫っているというの? それなら、あるいはそのきっかけこそが、露巳(ロミ)代表ら《小さきものたち》が計画しているテロ実行ではないだろうか?





 AM8:00


 フラワーデザインの薄手の白いレースカーテンが、彩光によって折り重なるように花がひらく。すでに冬の朝の陽光は十分な光を供給していた。お目覚めのシーちゃんが、ペットボウルの水を飲みはじめた。光の花がひらいたレースカーテンをあけると、暁光ぎょうこうが神宮の森を(あか)く包み、後方に連なるビル群までも霞みながら赫く染めていた。赫く目覚めはじめた都心の街は、森羅万象(しんらばんしょう)すべてが地鳴りのように動きはじめていた。


 Uruの「君の幸せを」という曲が流れる部屋で、ワタシは光の花ひらくレースカーテンをあけた。窓から差しこむ陽光は、ワタシと見上げるシーちゃんをあたたかな眼差しで包んでくれた。






挿絵(By みてみん)



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