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シーとピンク色のテロリスト  作者: ユッキー


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SCENE72



 大学院にすすんだミホコは、以前よりも大人びてみえた。めずらしく口べにをぬっていたからだろうか? もしかして恋をしている?

 大人びた丸い顔の彼女は、今日のワタシの服装にも興味を示した。とくに黒の三つ編ニット帽がMOMOEらしいと()めてくれた。試しに三つ編ニット帽をかぶり個室の一面窓に自分の姿を確認しているミホコに、 ──好きな人できた? と思い切って尋ねてみた。

 ──まさか! とミホコは笑いながら軽く一蹴(いっしゅう)したけれど……


 クリスマスが近いこともあって、ミホコはシーちゃんに犬用ケーキを買ってきてくれていた。ワタシが「株式会社小さな人たち」と活動をはじめ外出が多くなった時期、ワタシはもっとも信頼できる親友のミホコにマンションの合鍵を渡し、シーちゃんの食事の世話をお願いしていたのだ。

 ミホコはとってもシーちゃんを可愛がってくれた。生まれてこのかた一度たりとも怒られたり叱られたことがないシーちゃんは、至純な雪片(せっぺん)のように無垢であり、初対面のミホコに対してもまったく疑うことを知らなかった。


 ワタシは「株式会社小さな人たち」との活動の詳細をミホコに伝えていなかった。彼女は危険を伴う活動であることに気づいていたが、黙ったままシーちゃんの世話を引き受けてくれた。感謝、感謝!


 ──大学院でも一時期すごく話題になったけれど、前首相を暗殺した女の子の動機はなんだろうと。私は彼女の生い立ちに動機があるような気がしてならなかった。けっしてしあわせなものではなかったでしょう。


 ワタシは黙ったまま、GINZA SIXの焼肉店「焼肉山水」の解放的な一面窓から、眼下のクリスマスディスプレイ彩られた賑にぎやかな銀座中央通りをしずかに眺めた。多くの人たちが行き交っている。そこには当たり前の平穏な日常生活があった。

 そう、ミホコのいう通り前首相を暗殺した女の子は、けっしてしあわせな人生を歩んで来なかった。けれども誰よりも美しく尊いこころをもった女の子であることをワタシは知っている。侏儒(こびと)を伴ったはるか遠方からの使者だということも……



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