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シーとピンク色のテロリスト  作者: ユッキー


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72/77

SCENE70



 夕暮れときの群青色(ぐんじょういろ)の空とライトグリーンにライトアップされた時計塔を見上げる。宇宙時間は無限につづくけれど、地上の生きものたちには限りがある。限りがあることを常に意識しているわけではないけれど、すべてを運命に(ゆだ)ねけっして逆らわない人間以外の生きもののようにワタシも生きたい。銀座和光の時計塔の白い文字盤は16:51分を指していた。あと9分で待ち合わせの時間だ。

 多くの人たちが目の前を通り過ぎてゆく。限られた時間を多くの人たちが過ぎてゆく。数え切れないほど多くの人たちが生きている。ワタシの大好きなジョバンニは、 ──けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう! といったけれど、ほんとうに真摯に生きている人だけが発する言葉だろう。

 クリスマス・イヴの前夜、ワタシは久しぶりに同郷で同級生の親友ミホコと銀座三越前で待ち合わせをした。モデルの仕事を辞め、露巳(ロミ)代表のもと「ビック・ブラザー」との戦いに日々を費やした。なぜなら地球は、未来の知性を持った新しい生き物や宇宙の知的生命体のためにも、もう少し変わらなければならない。だからこそワタシは、この地球を変えるためピンク色のテロリストをなったのだ……


 でも今夜は、久しぶりにふつうの女の子としてミホコに会う。ふつうの女の子らしく今夜のコーデは、黒の三つ編ニット帽をかぶりフード付き白のダウンジャケットにデニムのミニスカートだ。先ほどから銀座三越前を行き交う人々の視線を感じるけれど、モデルだろうと想像する人がいたとしても、だれもワタシがピンク色のテロリストだと思わないだろう。

 それにしてもクリスマス・イヴを明日に控えた薄暮(はくぼ)の銀座の街は、きらきら星彩(せいさい)のように(きら)めいてとても華やかで美しい。けっしてこのハイセンスな街から悲壮感は感じられない。


 ──けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう!



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