SCENE69
ワタシとあゆみさんが歩きつづけている銀座のメイン通りは、それを両側から圧迫している建物ともども、いつまでも同じ表情で前方に展がっていた。それらソフィスケートされた空間は、確かに日本の資本主義経済の繁栄の象徴であろう。豊かであるために既存の日本人は何を為して来たのか? 豊かであるために既存の日本人は何を犠牲にして来たのか? ワタシの頬が不自然な空気の歪みを感じ、まるで眼前の夕映えた光景が虚構の世界であるかのような錯覚に陥った。
──千尋が暗殺した前首相の死亡によって、さらに日本は予測がむずかしい混沌とした方向へすすむといわれているけれど、ここ銀座を歩くかぎりそのような兆候はまったくみられないわね。
あゆみさんは口角をあげた苦笑を浮かべながらいった。
──今後、貧富の差はますます拡大していくでしょうし!
ワタシは小さく頷き、あゆみさんの言葉に同意を表しながら、あたかも虚構の世界であるかのような眼前の夕映えた銀座の街の光景のなかから、クスクス笑い合うひと塊りの小さな集団を見つけていた。
不思議なことに子どもほどの身長しかない彼女らは、思いおもいにブランドものの衣類を身につけ、恥ずかしそうにお互いの服装を品評し合ってクスクス笑っているのだ。よく見ると彼女らの服装にはCHANEL、LOUIS VUITTON、HERMES、GUCCI、DIORなどの一流ブランドのロゴが確認できる。 ──実際にそれらのブランドが、彼女らの身長に見合う商品を発売しているはずもないのだが── そうして夕陽に照らされた彼女らはお互いに服を取っ替え引っ換えしながら、さらに笑いを助長させているのだ。
──あゆみさん、ワタシにはみえるのです。
この大地が本当にひどく歪んでしまい深刻な窮地に陥ったとしても、はるか遠方から侏儒たちを伴って使者があらわれることを。そうして彼女らが必ずやその深刻な窮地から人類を救ってくれることを。そしてまさに千尋ちゃんは、侏儒を伴ったはるか遠方からの使者だったと思うのです!




