表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーとピンク色のテロリスト  作者: ユッキー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/77

SCENE65



 AM4:30


 高層ビル群の彼方(かなた)の東の空が色づきはじめていた。はじめて見る不思議な色彩に、広大な宇宙を感じる。眠らない巨大な都心の底から、地鳴りのような喧騒が地を這うように響いてくる。

 初夏の暑さを避けるため、夜明けとともにシーちゃんと散歩に出かけた。朝陽に照らされたはじめた舗道を、稲穂のように体毛を(まばゆ)く輝かせたシーちゃんが、一心に歩き出す。やはりシーちゃんはいつも通り、舗道の垣根や電柱や塀のかどなどの匂いを順番に嗅いでゆく。腕をしっかり振るウォーキング中の中年女性が、首に巻いたタオルで汗をぬぐい笑顔でシーちゃんにオハヨウと声をかける。新聞配達人の青年が、自転車を立ち漕ぎしたまま追い抜いてゆく。何か変なものを口にしないか絶えず注意しながら、お尻をふって歩くやや寸胴(ずんどう)な《小さな天使》を、ワタシはしあわせを噛みしめついてゆく。しかしシーちゃんは、ピンク色の小さな舌を出し息をハァハァさせ、やはり暑さを感じはじめた。 ──シーズーは全身がふわふわの体毛で覆われているため、とくに暑さに弱い──


 ──シーちゃん! お水飲む?


 携帯用のピンク色の容器にペットバトルの水を注ぎ、シーちゃんの前に置くと、すぐにシーちゃんは、ピチャピチャと音を立て一心不乱に飲みはじめた。


 ──もうシーちゃんには、暑すぎるのね!


 水を飲み終えたシーちゃんを、ワタシはそっと抱きあげた。


 ──シーちゃん、無理は禁物だから帰って朝ご飯にしましょう!


 遠くに、ビル群の合間から朝陽に輝く東京タワーがチラッと見えた。ワタシは東京のど真ん中にいた。朝陽が昇りはじめた都心のど真ん中にいた。夏が苦手な《小さな天使》をこの腕に抱いて! ワタシはシーちゃんのもふもふの頬にキスをした。

 ふとワタシは、最近読み終えたばかりの『カラマーゾフの兄弟』のある言葉を思い出した。長男ドミートリイが発した言葉だ。


 ──太陽が昇ったら、永遠の青年ポイボス(訳注 アポロンの別称で太陽を意味する)が神をたたえ、祝福しながら舞い上がったら! (『カラマーゾフの兄弟』新潮文庫 原卓也訳より)





挿絵(By みてみん)


 愛犬シーズーのシー



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ