表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーとピンク色のテロリスト  作者: ユッキー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/77

SCENE61



 PM11:00


 春子さんが少し歩こうといった。垣根のある幅の広い舗道 ──都心の舗道はあらゆる街の明かりに照らされていた── をコンビニで買った缶酎ハイを飲みながらふたり並んで歩く。交通量は減ってきたが行き交う車のヘッドライトは途切れることなく、紺碧色こんぺきいろの夜空が、眠らないビル群の照明によって曖昧に薄められていた。やはり星たちは見えない。

 ワタシはこの東京という巨大な街が、巧みに人間を(あやつ)りながら呼吸する怪物のように感じられた。人間たちは巨大な怪物の歯車となり、自分の意思ではどうにもならない。じっと耳を傾けると地面の底から、巨大な怪物の嘲笑(ちょうしょう)が聞こえて来そうだった。

 LOUIS VUITTONのツイードワンピースの左袖が歩くたびに無邪気に揺れる春子さんが、缶酎ハイを一気に飲み干していった。


 ──久しぶりね、こうしてのんびり東京の夜の街を歩くのは!


 ワタシは頷きながら、春子さんが飲み終わった空き缶を手さげのレジ袋に入れると、ワタシたちのすぐ脇を、若い男女が二人乗りする自転車が勢いよく通り越して行った。男が振り返りヒューと口笛を鳴らすと、リヤキャリアに(またが)った茶髪でロングヘアの女も一瞬、振り返った。すぐに男に対してバーカと(ののし)る女の声が、あらゆる街の音に紛れて聞こえてきた。

 そんな男女二人乗りの自転車が、街に溶けこみ小さくなって行く光景を目で追いながら、ワタシはそれが自分の捨てた青春のひとコマだったのかもしれないと思った。

 そんなワタシを春子さんが覗きこむように見つめると、いつもの雲透(くもす)きの春の光のような笑顔で尋ねた。


 ──MOMOE様は彼氏が欲しくなったり、さびしいと感じることはないのですか?


 ──ううん、ワタシはいいの、恋愛は必要ないわ! それにワタシにはシーちゃんがいるから、シーちゃんと暮らせるだけでしあわせよ!


 ふたたび雲透(くもす)きの春の光のような笑顔で春子さんは頷いた。そして、まわりを確認しビル群の照明で薄められた曖昧な紺碧色の夜空を見上げるとこういった。


 ──これは覚悟のうえ決定されたことです! 日本武道館で執り行われる前首相の国葬には、皇族や日本の中枢を担う政治家、経済人、そして文化人が参列するはず。なかでも前首相と関係の深かった要人を狙ったテロを決行します! 露巳(ロミ)代表はそこで「ビック・ブラザー」に繋がるものたちを殲滅(せんめつ)させるつもりです。おそらくわたしたちは無事でいられるはずはないでしょう。しかし千尋(チヒロ)さんだけを生け贄にすることはできません。ごめんなさい、MOMOE様には内密に話しをすすめてきましたが、あなた様には、わたしたちがテロを成し遂げたあとの状況を、しっかりと見定めていただきたいのです。わたしたちの決断と行動がなにをもたらしたのか。くもりなきまなこでシーさんとともに……


 街灯に照らされた鋪道の先に、先ほどワタシたちを追い抜いた自転車が見えた。あの若い男女がひとりの子どもらしき人物を取りかこむように立っている。 ──春子さんそれはダメ! 危険すぎる、無謀よ! とワタシが慌てて反対しかけた瞬間、あのメロディが聴こえてきた。


 ラーララララー

 ラーララララー

 ラーララララーララー


 ラーララララー

 ラーララララー

 ラーララララーララー




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ