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シーとピンク色のテロリスト  作者: ユッキー


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SCENE58



 生成色(きなりいろ)で統一されたワンルームマンションの遮光カーテンをあけると、(とも)りはじめた巨大な都心の上空は、いちめん茜色(あかねいろ)のうね雲に(いろど)られていた。あまりにも美しい色彩にそのまま窓をあけると、瞬時に、初夏の暖気とともに夕暮れときの膨大な喧騒が飛びこんできた。大自然が織りなす壮大なパノラマと、人類の叡智ともいえる大都会の高層ビル群が、反発し合いながらも溶けこむ光景がとても不思議だった。

 ふと、シャビーローチェストの上に置いてあるBAIESのディプティックキャンドルの炎が消え、生成色の壁を背景に芯から白っぽい煙の糸が立ちのぼっているのに気がついた。さらに次の瞬間、ベットにうつ伏せのまま熟睡していたシーちゃんが、ひとみを閉じたままピンク色の舌をペロペロと動かしはじめた。


 ──シーちゃん! お腹空いた?


 ようやく、初夏の熱気を遮断するため窓を閉めたワタシは、シャビーローチェストの上のBAIESのディプティックキャンドルにマッチでふたたび火をつけると、シーちゃんの晩ご飯の用意をはじめた。

 都心の細胞のひとつのように茜色の陽差しが差し込むこの部屋で、次第にワタシ自身もシーちゃんも夕焼け空と一体となって宇宙に同化される感覚に陥った。さらに思い出したようにリモコンでテレビの電源をオンにすると、テレビ画面には速報を知らせるテロップが流れていた。ワタシはベットの上のシーちゃんをそっと抱きしめながら、そのテロップの文字を静かに目で追った。


 ──本日、前首相暗殺容疑者の一人が警察署に自首、容疑者は20歳前後の女性の模様!──


 ワタシはそのままシーちゃんを抱きあげると、ふたたび窓をあけ、すでに高層ビル群に隠れた西の空のみが茜色に染まる都心の上空を眺めた。一番星が輝いている。星はいつの時代にも人々の心を深く引きつけ、とくに聖書においてはその最初から、神が光を与えたものとして太陽とともに、神の力とわざを表すものとされてきた。 ──神ご自身の創造したイエスのことが聖書の最後に明けの明星(金星)として、象徴的に表されいる── しかしワタシは人間の創造した神は信じていない。宇宙は人間が誕生する遥か以前から、宇宙の節理によって生まれ存在してきたのだから。そしてきっとけっして神様でもなんでもない、ひとつのほんの小さな生命がこの宇宙の中心にいる……


 シーちゃんと一緒に晩ご飯を食べ、シーちゃんと一緒に仮眠をとったあと、ワタシは春子さんに会うため銀座へ向かった。出かけるまでの間、テレビのニュース番組では、緊急速報としてまだ若いひとりのテロリストの自首について、 ──驚愕の事実との扱いで── 報道されていた。遥か遠方からの若い使者を、非道なテロリストとして……




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