SCENE48
5月下旬のある早朝。生成色で統一されたワンルームマンションの遮光カーテンをあけると、いつもと変わらない静寂な曙光に照らされた都心の光景があった。大自然が織りなす壮大なパノラマと、人類の叡智である都心の高層ビル群が反発し合いながら共存している光景もいつもと同じだ。WoodWickのアロマキャンドルがパチパチと癒しの音を奏で、シーちゃんの寝息がすべての幸福の象徴のように聴こえた。いつもと変わらないはずだった。
祈るような思いでテレビをつけると、NHKは緊急のニュース速報を報じていた。 ──前首相が心肺停止。緊急搬送!── というテロップが流れ、男性アナウンサーが緊張した面持ちで、前首相が心肺停止、緊急搬送された! と興奮気味に報じている。
ワタシは一瞬目を閉じ、それからシーちゃんの寝顔を眺め、寝息を聴いた。何かが壊れ、何かがはじまってしまった瞬間だった。そして遥か遠方からの若い使者を思った。グレーのパーカーのフードを目深にかぶったショートカットの若き使者を……
──千尋ちゃん!
つづけてNHKの緊急のニュース速報は、前首相の世田谷区成城の自宅から複数人の犯人が逃亡したことを報じた。窓外の朝陽に照らされた高層ビル群が、さらに赫く輝いて見えた。
──複数人? 七人の侏儒かしら。千尋ちゃんをまもってくれたのね!




