SCENE3
すでにシルクロードを思わせる赫い落日に、築地本願寺本堂は巨大なピラミッドのように褐色に染まっていた。ワタシは本堂前の立派なベンチに腰かけ、夕陽に感光する白い画用紙のような舗道に目を向けた。
去年、東京の街並みがクリスマス一色に彩られたころ、ワタシはこの白い画用紙のような舗道で、シーズーのシーちゃんとはじめて出会った。
通行人の間を、落照に白とゴールドの体毛をうぶ毛のように美しく煌めかせてシーちゃんは歩いてきた。ワタシがベンチからゆっくり立ちあがると、飼い主と一緒にシーちゃんは、立ち止まってくれた。
そしてオヤツを勢いよく口にすると、ピンク色の舌をちょっとだけ出したまま、ワタシをその丸いつぶらなひとみでじっと見つめてくれた……
ふたたびワタシは、沈みゆく落日に照り映えた白い画用紙のような鋪道に目を向け、こころを澄ませた。すべてを透かした清冽なこころで目を澄ました。祈り願いながら……
通行人の間を、小犬とベージュの髪のおとこが一緒に、ややジグザグになりながらゆっくりと歩いてくる。やはり落日に白とゴールドの体毛がうぶ毛のように煌めいて美しい。
ワタシは、全身を震わせながら立派なベンチから立ちあがった。
──シーちゃん!
ベージュの髪に左耳にTiffanyのサークルピアスをしたおとことシーちゃんは、目の前で立ち止まってくれた。今日もシーちゃんは、勢いよくオヤツを口にしたあと、おすわりをしたまま、その丸いつぶらなひとみでじっと見つめてくれた。
ポニーテールにライトピンク色の大きな耳が垂れたブタの顔が真ん中にあるカチューシャをしたワタシを見守るように……
それからワタシは、落日に彩られた夕空を背景に、ベージュの髪に左耳にTiffanyのサークルピアスをしたおとこと見つめあった。おとこはすべてを透かした清冽なこころで頷くと、左手で握っていた赤いリードをワタシに差しだした。
──シーと一緒に!
ワタシは、大きく頷いて赤いリードを受けとると、祈るように跪き、落日に体毛が赫く煌めくシーちゃんを両手で優しく抱きしめた。シーちゃんのいのちの鼓動が伝わってきた。シーちゃんの碧い声が聴こえた。すぐにシーちゃんは、ワタシの頬をピンク色の舌で何度も舐めてくれた。
──ありがとうございます、シーちゃんよろしくね!
すでにライトピンク色のカチューシャのブタの垂れ下がった大きな耳がビクんと跳ねあがり、テロ実行の合図は発せられている ──まだ初心者のテロリストに過ぎないが──
赫い落日は、東京の喧騒に満ちた異様な大地に沈もうとしていた……




