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シーとピンク色のテロリスト  作者: ユッキー


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33/77

SCENE31



 都心のけむった曖昧な夜空に、何十億光年前に放たれた星の輝き見つけることは、人類の未来にとってなによりも大切なことのひとつだ。人類が滅んだ後あるいは数万年先、はるかな未来に知性を持った新しい生き物、もしくは宇宙から知的生命体がやってきて地球の地面を掘ったとき、恐竜の化石、三葉虫やアンモナイトの化石などよりも、たくさんの人類の痕跡が残されているだろう。アスファルトで覆われたたくさんの道路網や巨大なビル群などの大都市跡。そして土に還ることのない金属やプラスチック類や化学物質等々。

 地球は、未来の知性を持った新しい生き物や宇宙の知的生命体のためにも、もう少しだけ変わらなければならないのだ。だからこそ、ポニーテールにライトピンク色の大きな耳が垂れたブタの顔が真ん中にあるカチューシャをし、セレクトモカのピンクニットのディズニーコーデのワタシは、この地球のピンク色のテロリストになるのだと誓ったのだ。


 両サイドに綿あめのような膨れた癖毛を残したまま滑らかに禿げあがった中年男が、高級赤ワインを水のように飲みながら告白した「ビック・ブラザー」の正体の一片はとても貴重な情報だろう。しかしこの中年男は、なんの力も能力もないただの幼馴染みに過ぎないことも明白だった。今後この中年男と接点を持ち続けても「ビック・ブラザー」へと近づける可能性は皆無に思われた。いまや「ビック・ブラザー」は、地球の中心部のマントルの下にある核のように、日本社会を裏から動かす巨大な力を持っているはずだから……


 一面窓から煌びやかで洗練された銀座の夜景 がひろがるリビングの、散光された灯りのひとつが絨毯敷きの床に矢印のように伸びていた、ワタシはL字型の薄いクリーム色のソファから立ちあがり、そのまま窓外を目を向けたまま中年男に尋ねた。


 ──鈴木さんも、このクラブを始めた幼馴染みと同じように小学生の少女が好みなら、ワタシのような成人したオンナに魅力を感じられないのでは?


 中年男は、ワイングラスをテーブルに置きまっすぐワタシを凝視すると、禿げあがった頭頂部を平手で一つ叩いた。細く突き刺すような眼が消えてなくなったから、おそらく笑っているのだろう。


 ──いや、そんなことはない! そりゃ真っ白な汚れを知らない幼い女子(おなご)もいいけれど、君のような美しい大人の女子(おなご)の魅力も忘れていないから安心してくれ!


 自然界の摂理と相対(あいたい)するかのような煌びやかな銀座の夜景が広がる一面窓に、いつの間にか左腕が失われたモデルのような女性の姿が映っていた。無表情に見える臈長(ろうた)けた彼女の残された右手には、アイスピックのような鋭利なものが握られていた。次の瞬間、有無を言わせず左腕が失われた女性は、背後からL字型の薄いクリーム色のソファに腰かけた禿げあがった中年男の後頭部に、残された右手でアイスピックのような鋭利なものを差し込んだ。それから彼女は、慎重に中年男の禿げあがった後頭部から流血がないか確認すると ──脳の下部にある特定の部位を破壊したため、中年男は自然死と判断されるという── いつもの雲透(くもす)きの春の光のような笑顔で、ワタシに向かって声をかけた。まるで何事もなかったかのように……


 ──MOMOE様、ご苦労様でした! 


 ワタシは、一面窓に映るL字型の薄いクリーム色のソファに腰かけた両サイドに綿あめのような膨れた癖毛を残したまま滑らかに禿げあがった中年男が、半分口を開けたまま動かなくなった姿に驚きつつ反射的に頷いた。以前、左腕を失う前の春子さんが語ったひとつの話しを思い出し、あらためて彼女の非凡な能力と揺るがない意志の強さを痛感させられながら……


 ──人々の意識がまだ未明のものであった頃から、わたくしどもは《小さきものたち》とともに生きてきました。しかしながら現在の人間社会では、その《小さきものたち》とともに生きることはとても困難になってきています。なぜならわたくしどもと相対あいたいするある巨大な力が《小さきものたち》を脅かすようになったからです。そのある巨大な力を「ビック・ブラザー」と呼んでいます。

 MOMOE様、もうお気づきかもしれませんが、露巳(ロミ)代表はハンセン病患者です。そのためあのような大きなひたいなのですが。わたしは親に捨てられ児童養護施設で育ちました。中学生の頃、イヤになって施設をとび出し東京の繁華街を彷徨っていたとき、露巳(ロミ)代表に助けていただいたのです。いま運転しているナナコをはじめうちのスタッフ全員同じなのです。行き場を失った少女たちを露巳(ロミ)代表は救ってくれました。そして露巳(ロミ)代表は、世の中の一番奥底に存在する悪の核を絶たなければならないと確信されました。




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