SCENE24
グレースケール画像のようにすべてが灰色にみえた。まわりの人々の混乱とさらに強くなった雨がむかしの遠い記憶のように朧げなまま、黒く濡れたアスファルトにナナコちゃんは捨て猫のようにうずくまり、怯えた仔猫のような陽葵ちゃんが蒼白な表情で震えていた。ワタシは必死になってナナコちゃんに呼びかけ、駆けつけた警察官や救急隊への対応に追われ自分の呼吸さえ曖昧になった。すっかり濡れたナナコちゃんの背中に雨に混じってひろがりはじめた鮮明な赤い色だけが、ペトリコールの匂いとともに妙に現実的だった。アスファルトに落ちたナナコちゃんがかぶっていた犬のDark brownの丸い鼻と大きな垂れ耳が付いたベースボールキャップを拾うと、すっかり雨水を含んで重たくなっていた。ワタシは救急車の中で、ナナコちゃんの手を握りprayerつづけた。
里親がすぐに迎えに来ると ──露巳代表が正式に里親になっていた── 陽葵ちゃんを警察官に託していた。蒼白な表情で震えていた陽葵ちゃんは、自分を刺そうとした黒い影こそが兄だと信じていた琢磨というツイストスパイラルパーマの若い男だったことにかなりのショックを受けているようだった。その琢磨という若い男は、そのまま車道へとび出し車に轢かれ即死だった。 ──後日、警察から伝えられた── 「ビック・ブラザー」のGroupが、露巳代表のもとで保護された陽葵ちゃんの口封じのため、琢磨という若い男におのれの命と引き換えに殺害を命じた可能性はあっただろう。しかしなぜ男が、みずからの命を擲つように車道へとび出したのかはわからなかった。
ワタシの手のなかでナナコちゃんの幼いぐらいの細い手が、生死の境を彷徨いながらいのちのPowerを伝えていた。iPhoneから逼迫した事情を伝えた際の、春子さんの雲透きの一条の春の光のような声がこころに残った。
──祈りましょう!
ワタシはナナコちゃんの幼く細い手を握りながらprayerつづけた。すでに熟睡しているはずのシーちゃんの寝顔と寝息に向かってprayerつづけた。




