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家ではお兄ちゃんとすり寄ってくる妹への告白を目撃したら、小動物系の幼馴染が告白してきた件  作者: 滝藤秀一
デートとあいさつと

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15/26

☆妹の苦労と思惑

「馬鹿な、ばかなー、なぜこういつも思わぬ方向へ行くんだぁ! おかしいって」


 またもあたしはリビングで発狂しかけていた。

 テレビの音量を上げ、シャワーを浴びているお兄ちゃんに万が一にも聴こえないようにして叫ぶ。


 お風呂場へ向かうお兄ちゃんの幸せそうな顔ったらない。


 あの顔じゃ――

 夏希の両親への挨拶を考えすぎて、デートも緊張でダメダメ作戦も失敗……



 な、なぜだ?



 このあたしの作戦が、灰色の脳細胞を持つこのあたしがこれほどまでにことごとく――

 あのお花畑小動物の夏希がかかわると、お兄ちゃんまで妙な化学反応を起こすのか。


 ソファの前の机にノーパソを起動し、情報の信ぴょう性をいま一度確かめる。

 思わぬ画面上の文字に目を見開き、天を仰いだ。


「ああっ! 空調直してる。超綺麗……だと!」


 恋人たち一押しの穴場カフェです。

 店員さんが神秘的な空気を醸し出し、甘い香りが漂います。

 記憶に残る1日になるでしょう。


「はあぁあああ! 注釈、おっそ! なんだ甘い香りって! サウナでむさいんじゃなかったのかよ!」


 頭を抱えうなだれる。


「あの子狐、子狸、ウサギみたいな目で誘惑していたに違いない。まさかまた吸い付いてないだろうな! こ、こ、こんなことならやっぱりついていけばよかった」


 


 いや、待て、待て。冷静になるのよ。



 ものは考えよう。

 鎌倉旅行はあたしも行くんだし。

 そこが勝負だ。



 そうだ、そうだ。



 メンタル弱いお兄ちゃんは夏希と別れたら、いつまで寝込んでるかわからないじゃない。

 可哀そうなお兄ちゃん。


 毎日、看病……………………して、あげないと。


 


 最近は胸が時々苦しくなる。




 自分でもここまでお兄ちゃんのことが好きというのが怖い――


 あたしを除外するならば、お兄ちゃんの相手として、夏希以上に適任な子なんているんだろうか?

 あたしはお兄ちゃんに幸せになってもらいたいんだ。



 でも――



 お兄ちゃんに甘えたい! 可愛がられたいんだ!



「妹だっていいじゃん」



 とりあえず――



「見てろよ、夏希。旅行中、お兄ちゃんといちゃつくのはこのあたしなんだからね」

「陽、いつもありがとな」

「うえぇえ!」


 タオルで髪をふきながら上半身裸のお兄ちゃんが現れる。

 思わず冷や汗をかいてしまったが、少し胸が高鳴る。


「どうした、驚いて?」

「い、いまのー、今の聴こえた?」

「えっ、いや」


 ほっと胸をなでおろし、ゆっくりと深呼吸する。

 お兄ちゃんは嘘つくのが下手だから、動揺してないところを見ると聴こえてなかったんんだ。


「そう……お父さんのスーツ用意しておいたから、あとそれおばさんが好きなクッキー。手ぶらだと印象悪いからね」

「おっ、おう。ちゃんと旅行のOKももらってくる」

「……うん。頑張れ、お兄ちゃん」



 対面している姿が目に浮かぶ。

 夏希の両親はいいひとだから、心配はいらないと思う。だが――



 人間、腹の中では何を考えてるかわからないからな。



 お兄ちゃんを本当は嫌ってるなんてことはないと思うが――

 この挨拶は旅行がかかってるんだ。あたしとお兄ちゃんの旅行イベントが!



 ☆☆☆



 気になったあたしは、話を終えたころを見計らい川瀬家を訪れた。


 仲睦まじい様子を見て、ほっとすると同時に爪が食い込むくらい手を握りしめてしまった。

 この小動物、なにさりげなく手を握ってんだ!

 やっぱりお兄ちゃんは取られてなるものか!



 だけど、あたしの心には少しもやもやした気持ちが張り付いてしまった。


 

 そして、鎌倉旅行の日がやってくる。

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