四枚目 『where a bouts』 【7】
【7】
あの絵のような綺麗な紅葉が、町の道を風に吹かれて散っていく。
作品が小さなもので壊れにくいものは、搬入の作業が大きいバッグ一つで済むのがいいところだなとつくづく思う。
肌に涼しくなった風を心地よく感じて目を細め、ギャラリーに向かって歩いていく。
普段の平日は仕事の日なのに、有給を使い昼間から出かける事が非日常の出来事で、わくわくしている自分に気づく。
ギャラリーに着き、ドアを開けると華と目があった。
「……今日は、よろしく願いします」
「こちらこそ」
華は、自分の絵を並べる作業をしながら、笑みを浮かべる。
「こんにちは、テーブルはこれから運びますね」
春は奥から声をかけて、テーブルを壁に立てかけているところだった。ざっくりとした場所は、事前に打ち合わせ済みになっているので、できるところから展示を始めているようだ。
「椅子何処だ、椅子」
奥から、細長い金属の棒を持ったルカが出て来る。
「椅子は……あ、そのへん」
「あ、アレか」
もうすでに引っかかる部分は、大体同じ高さになるようにネジでとめなおしてあるあたり、ルカの手伝う様子は手慣れていた。椅子を持って来ると、椅子に乗ってレールにひっかけていく。
とりあえずテーブルを一個運ぶと、その上に持って来ているビーズのアクセサリーとネックレスをさげるためのスタンドに飾っていく。スタンドは100均で購入できる材料で作ったものがほとんどだ。
「次は…テーブルか」
そう言うと、ルカは残っているテーブルを受付の場所までてきぱきと運ぶ。
「あ、珈琲は淹れてあるからな」
「分かった。これができたら飲むね」
展示は、照明の微調整以外は予定していた時間よりも早く終わってしまった。
「あとは、後でもできるから…少し休憩しようか」
「そうだね」
展示されたギャラリー内は、またいつもと違った雰囲気になっている。
華の絵の隣には、同じ色でそろえたアクセサリーが飾られている。一枚の絵と一個の作品がセットになっているかのように飾られていて、隣に視線を移動するたびに、別世界になるような雰囲気になっている。
3人で一息をいれる珈琲を飲んでいると、ドアを開けて、幸来が入って来た。
「……すみません、遅れました?」
「時間とおりだよ。後は照明のみだし…珈琲どう?」
「いただきます」
「頼まれていた籠、持って来てそこに置いてあるから使って」
ルカは視線を籠に向けた。
「ありがとうございます。丁度いい大きさですね」
さっそく幸来は、数枚セットに小袋にいれてある焼き菓子を並べてみる。
「よかった。作ったかいがある」
「……作ったの?」
私がそう質問すると、簡単だという表情をルカが浮かべる。
「大きいのは無理だけど、上と下で編む作業だから」
「……そう言えるのが、ルカだから」
「そうですね」
珈琲を飲みながら、幸来は頷く。
「……さて、照明やろうか」
華が飲み終わったコップをテーブルに置くと、春も動き出す。
「作品にあたるような位置でいいですよね」
「うん、少し斜めでもいいかも」
動いてくれている二人や、ルカや幸来に視線を向けてからコップを見る。
仕事を転職するにしても、収入アップできると夢を見られる年齢でもない。
結局、私は、今すぐできる節約から始めてみる事にした。
無駄をやめて、自分が息苦しくならない程度の節約をしていく事は、自分にとっての大切な事は何かを見つめる作業でもあると感じた。
自分自身を見つめ、心の中を整理整頓する事は何事にも通じる部分があるように思える。
転職のために、できる事を書き出す作業すら慣れていなくて、友人たちと話ながらになってしまう。最後には、まとめ上手のルカに要点をまとめたメモを書いてもらった事が、とても役にたった。
それと、年齢ごとのとりあえずの出来事や、それまでにしておきたいことを年表として書き出すと冷静になれた。
金額の事だけ書き出していた時は、不安があって、その正体がよく分からないものは、恐怖でしかなかった。けれど、書き出して、それに対してどう対応すればいいのか?何が分からなくて怖いのか?に考えの焦点を向けた時に、不安は大きなものではなく、小さな実体をともなった形を確認する事ができた。
だからといって、今の状況に変化は全くない。
変化したのは、自分の乗り越えたい事に対する考え方の道順がはっきりした事で、一歩ずつ歩めば越えていく事のできるものだと実感する事ができた。
その時も改めて、『ルカって…何者?』と感じずにはいられなかった。
ルカだけではない。
居てくれる事が当たり前になっている幸来も、華も、春も…尊敬できる強さや優しさを持っている人達ばかりで、何者なのだろうと感じる事がある。




