四枚目 『where a bouts』 【4】
【4】
携帯のメール画面を見ながら、結局は閉じてしまう事を何回繰り返しただろうか。
「よし、寝よう」
何も浮かばない時は寝てしまうか、頭の中を一回からっぽにしてしまうのが一番いい。布団をしいて潜りこみ、ゴロゴロしながら頭の中を整理してみる。
将来の事を考えた時、収入面を増やさないといけないのは、自覚している。一回、想定できる必要金額の大雑把な金額を計算してみた事がある。いっそ、その合計金額が宝くじで当たらないかと買ってみた事もあったけれど、さすがに一枚だけでは当たらないらしい。
現実的に考えると、転職する事だと分かってはいても、『何ができるのか』を考えてみた時に、有利になりそうな事が何一つ思い浮かばなくて苦笑を浮かべる。
事務職をしているので、事務仕事はできると言っていいのかもしれない。
物づくりが好きだと言っても、趣味での話になる。他の転職で収入をアップできそうなスキルは、正直なところ、何もない。
今の仕事がバイトから社会保障のある働き方になったから、他でのバイト経験もない。ルカに話してみたら、『一つのところで長期間働き続けているだけでも有利だ』と苦笑を浮かべながら言われた事もある。
迷いがあるのは、自分の好きな分野での仕事を試してみたい気持ちがあるからだ。
それがはっきりしないのは、かすりもしない可能性が高い事に挑戦する勇気がないからなのも自覚している。収入がゼロになる事は、貯金を使いはたせば期間を確保できる。
ピリリ
電子音がして、携帯の画面を見ると彼女の名前が表示されている。
「はい、もしもし」
電話に出ると、気まずそうな気配を感じる。
『あの一昨日の事だけど…』
「うん」
『好き事に対して挑戦する事に対しては、賛成だからね』
「……ありがとう。一昨日はごめん。つい、感情的になってしまって」
『うん』
布団から体を起こした。
「将来の事を考えていなかったわけじゃなくて。収入をあげる方法がみえなくて」
『それは、私も…』
「気持ちは嬉しいけど…口でいうほど、優しくはないから」
私は苦笑を浮かべた。
「……いつになるかは分からないけど、安定したら一緒に住もう」
『……』
電話口で、幸来が赤くなって固まる気配を感じた。可愛いと思い、思わず笑ってしまうと、笑わないでよと言い返されてしまう。
「そうそう、今日、華のところに行って来たけど、その時に…」
お菓子作りの事を話すと、引き受けてくれることになった。また、今度と電話を切ってから携帯を布団の傍に置いておいたバックの中にしまった。
言葉に出してしまえば、冷静になれて頭の中が整理されたように思う。
液晶画面を見る作業よりは寝つきがよくなるらしいので、夜は液晶画面を見る事をなるべくさけたい。かといって、目も覚めてしまったので、起きだしてビーズのアクセサリーのデザイン画を描く事にした。
「…そういえば、今度の展示、華はどういう絵を描くのだろう?」
折り畳み式のテーブルの上で、紙の上に鉛筆をはしらせながらふとそんな事を思った。
その頃、華は久しぶりに昔描いた絵を見ていた。
新しく描く前に、どういうものを描いたのか見ておきたくて、春が夕飯の買い出しをして家に戻って来る前にしまうはずだったのだが…。
「あ、ポイントカードここに忘れていた。…ん? その絵、華が描いたものですか?」
予想外に早く帰宅した春に見つかり、
「この絵、優香さんですね。どう見ても」
近くでじっくり見られ、
「綺麗ですね」
深くため息を吐きだす。
「……やっぱり、付き合っていたのか」
「あの……それだけ?」
「……嫉妬はしているけど…今度はもっと描いてくれますよね?」
にっこり春に笑ってそう言われ、華はまた赤くなって固まってしまった…らしい。
私、優香が華からこの時の事に関して、『君のせいだ』と苦情という報告を受けたのは、また、後日のお話です。
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次回の更新予定は、22日以降になります。




