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三枚目 『Ravishing hart』 【5】


 【5】


 ギャラリーの展示、最終日の前日。

 僕は、学校から帰宅後に、ノートパソコンを開きプリンターのUSBケーブルをつなげた。どの写真にしようか迷いながら選び、加工処理をしていく。

 写真は、被写体の色を絵のように変えて撮る事はできない。

 僕も専門学校で勉強してはいても初心者に近いので、自分の言葉で説明できるほど知識を飲み込めていない。これだけは言えるのは、被写体にあてる照明によって色味を変える事はできる。セロハンを通して外をのぞくと、外の物の色は変わっていないのに、セロハンの色味で見る事ができる。それと同じように、照明の色も微妙な部分も含めてたくさんの色があるし、パソコンの中で画像処理をして加工する事もできる。加工する作業は、人によっては絵を描く感覚に近いかもしれない。

 自分でも基本をなぞった作品になってしまっているのに気づいて、苦笑を浮かべる。良い写真を撮ろうと意識すると、基本に忠実になってしまっている。もっと、たくさん撮り慣れていれば、感覚で撮れるようになれる気はする。

 「……どんな反応するだろう?」

 加工処理の終わった写真を見ながら、わくわくした気持ちで印刷にかける。

 友人達の反応は、正直なところ微妙だった。

 『あんた、本当にこの写真を見せるの?』

 『…さやかがいいなら、いいけど』

 微妙かもしれないと、僕自身も感じてはいる。それでも、今まで撮ってきた写真の中で見せるのならば、この写真以外にはないと直感が告げてくる。

 印刷した写真を、手紙をいれる封筒にいれてしまった。


 失恋する事が決定事項ならば、こういう終わらせ方が一番僕らしい。

 ギャラリー展示の最終日、友人達と最寄り駅の改札口で待ち合わせをしていた為、いつも行くよりも時間が遅めの昼頃になってしまった。

 展示の最終日で、撤収作業の時間早めに閉まる事もあり、ギャラリー内は早めの時間に賑わっている。Natumiさんは対応におわれている様子で、ルカの姿は見えない。閉まるまで時間があるから、後から来るのかもしれない。

 オーナーは僕に気がつくと声をかけた。

 「来てくれたのに、ごめんね。もうしばらく、あんな感じだと思うけど、落ち着いたら話せると思うよ。あれ、友達?」

 「はい、専門学校の友人達です」

 そう言った後、オーナーの目が獲物を見つけたようにキランと光る。名刺ケースからギャラリーの名刺を取り出し、2人に渡している。住所、ギャラリー名、ギャラリーへの連絡先とHPのアドレスが記入されている。

 「何かの機会には思い出してくれると嬉しいです」

 「は、はい」

 「機会があれば、連絡します」

 営業を見ながら、あの子の姿を探すと、別の場所で同じように営業している。前までこんな名刺を渡しているのを見かけた事もなかったから、最近作ったのかもしれない。

 「はい、豆持って来たよ。ミルで挽いてある」

 後ろから声がして、振り向くと私服姿のルカが立っていた。

 喫茶店の外で会った事がなかったから、ラフな私服姿が新鮮に見える。

 燕尾服をきたかちっとした服装もカッコイイけど、カーキ色のカーゴパンツに黒のⅤ字ネックのTシャツもよく似合っている。

 僕は、ルカの職場以外の部分は全部知らない。知っている部分は、表面を撫でたぐらいしか知らない事、Natumiに負けている現実を実感させられる。

 「ありがとう、場所はいつものところだから、お願いします」

 「…はい」

 「淹れたら、この子達に渡して。他は、出しているから」

 「分かった」

 ルカは僕達に視線を向けると、笑みを浮かべる。

 「来てくれていたのか。ありがとう」

 「歩いていたら、たまたま気になって、ここを知って。それから、たまに来るようになっていて」

 「そうか…少し待っていて」

 ルカはそのまま珈琲を淹れに奥に行ってしまう。戻って来た時にすぐに渡せるように、ポケットの中にしまっていた封筒があるのを指で触ってたしかめた。

 2人はルカの後ろ姿を見送る。

 「あの人? なんていうか、雰囲気が格好いい」

 「うん、そうでしょ」

 「あの人か…うん、いろいろ、納得した。さやかが好きそうなタイプだね」

 「納得って…」

 苦笑を浮かべて、2人に視線を向ける。

 「なんだろうな、予想していたタイプそのままの人?」

 「そうだね」

 「2人とも予想していたの?」

 「うん、今日来る事になっていたから、いろいろと想像を」

 「なぜだろう、そのいろいろの部分は僕が聞いてはいけない気がする」

 「そんな事はない…と思うよ。ね?」

 「え? あ、うん。たぶん」

 「たぶん、なんだ」

 珈琲のいい香りがふわりと漂う。

 「お待たせ、はい珈琲」

 トレーに珈琲をのせてルカは、僕達に珈琲を渡す。僕はルカにあの写真がはいった封筒をルカに渡した。

 「はい、これ。あとで見て」


いつもお読みくださりありがとうございます。

三枚目 『Ravishing hart』は、あと三話ほど続く予定です。


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