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二枚目 『a fragile article』 【6】


 【6】


 いつも、そうだ。

 まだ、本人には言わないでおこう。そう思っているのに、他の人には話しているから、結局のところ、早めに伝わってしまう。

 頭の中の計画通りにいかない事は、人間関係だけにとどまらない気がするけど。

 苦笑を浮かべながら、目の前のルカと春に視線を向ける。

 ビニール袋の中から買い出しのお菓子を出しながら、夏美さんがため息を吐き出す。

 「私の周りには、不器用な人が多い気がする」

 珈琲豆の袋を取り出して、食器棚からミルを取り出すと手際よく人数分程度をいれて弾き始めた。ここ最近、特に仕草がルカに似てきている。

 「まず、二人とも。自分が思っている以上に、周りから好かれているから。その相手の感情を読もうとする事は、普段の人に対する接し方で愛嬌に見えるから」

 「……そうなのか?」

 夏美さんはルカに対して、意地の悪い笑みを浮かべる。

 「結局、いろいろ考えているけど、悪い方向には考えてないしね。それに、自爆しているところがあるドジっ子だし」

 「……ドジっ子」

 嫌そうな表情を、春は浮かべる。

 「なんとなく、分かる気がする」

 私がそう言うと、ますます春は落ち込んでいる雰囲気になった。

 「それで、華さんは…自分で抑えている子供の自分を少しは開放していいと思います。出し過ぎるのは、迷惑をかけてしまうのでダメですけど…」

 ポットからドリップして、サーバーにお湯を注ぎ、珈琲を淹れながら、視線をルカに向けた。

「こんな人でも、一応、仕事して収入を得ているので」

 「こんな人…もうその一言に、いろいろな意味が含まれそう」

 春は、お菓子を食卓の上に出し終わると、来客用の白い珈琲カップを人数分用意する。

 「うん、含まれている。いろいろと」

 夏美さんは珈琲カップの中に淹れたての珈琲をいれる。

 「その中に、可愛いっていうのもある。言われるのが嫌いだから、あまり、言えないけどね。春も、だけどね。さっき、ルカが言っていたのが当たっていたとしても」

 「……」

 春は、何も言い返す事ができずに、そのまま、珈琲をこっちに持って来る。

 その様子を見て、図星だったのかと、夏美さんと視線があうと本人たちに気づかれないようにふわり優しく笑ってしまう。 たぶん、こういう部分も愛しいと感じてしまうのは、末期なのだろうと思う。

 「さて、じゃ、デザインだけど…」

 パソコンを起動して、画面を出す。春は、あらかじめ印刷しておいたダイレクトメールがおさまっているクリアファイルを持って来る。

 「メールでも説明したけど、こういう感じで作っています」

 デザインの説明をしている間に、春はクリアファイルのダイレクトメールが入っているページを開いて見せる。若干の色が違うと話していても、夏美さんはよく分からない様子だった。

ルカはプロほどの知識はなくても、趣味になるが、自分でパソコンに取り込んだ画像を自宅のプリンターで、ハガキや印刷用紙に印刷した経験があるという。パソコンの中で濃淡を変える事もできるし、用紙によって多少の出方が違うというのは、なんとなく知っていたと話していて、直接見たいという話の流れになった。

「印刷するとこうなるのか。少し色味が違う」

 「紙質によっても若干の違いは出る気がするので、同じ用紙で印刷しています」

 「実際の印刷は、このプリンターで?」

 「実際は、枚数が多いので、業者に頼みます。家庭用のプリンターでも印刷する事はできますが、多い枚数には向かない気がするので」

 「なら、大体は同じかな」

 「おそらくは」

 「……夏美は?」

 「もう少しだけ、あたたかさがほしい」

 「パソコン上で設定を変えてみましょう」

 「できるの?」

 「できる。多少の加工は、パソコンの中にソフトが入っていれば、印象やタッチを変える事ができる。撮る時の照明での光の印象と構図も大切だけどな。写真もこだわれば、絵と同じようにこだわれる技術的な部分は、学べるけど、これで撮るという気持ちだけはセンスだと、俺、個人は思う」

 私は、パソコンの中の設定を変えて色を調節する作業をしながら、ルカに視線を向ける。

 「昔、趣味で、携帯のカメラでよく撮っていた人のセリフだね。絵も少しだけ習ったから、構図の基礎中の基礎のだけで、あとは、ま、なんとなく撮っていたよね」

 「……そうなの?」

 「すぐ、できたから」

 「分かります。撮るだけなら、気軽にはじめられますよね。私は、美術が苦手なので、画材を決めたり、色を決めたりするのが慣れなくて。でも、写真は、決める事が撮りたい事だけなので、始めやすくて」

 春が楽しそうにそう話しているのを聞きながら、今度、関連の本を自分の本棚から発掘しておこうと平和に思った。

 珈琲を飲みながら、するりと夏美さんは爆弾のような質問を投下してきた。

 「決める事ね…それで、二人は何時から付き合うの?」


いつもお読みくださり、ありがとうございます。

今週、平日にあと2回更新する予定でいます。

今月の更新は15日までの、二枚目『a fragile article』を書き終わらせる予定でいます…。


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