二枚目 『a fragile article』 【4】
【4】
「それは、よかった」
そう返しながらも、内心、『今、考えながら答えてくれたけれど、どうしてくれようか』と思わなくもない。いろいろと浮かぶのを、わざと紅茶をゆっくり飲みながら頭の隅に追いやる事に成功した。
続きのデスクワークをするため、食卓に座った。
広げたままのパソコンの画面を立ち上げて、デザインを冷静な視線で見る。
冷静にこうしようと思って考えているつもりでも、作っていくうちに夜中のラブレターな感じになっていく事は、だいぶ押さえられても、それでも、やっぱり少しは気持ちが高まってしまう事のすべてを押さえる事は難しい。
少し離れてから戻ってきて見る時ほど、冷静になり、気づく事ができる。
「はぁ…」
冷静になればなるほど、作っている時には気づく事のできなかった、荒い部分の数カ所に目がいく。
大まかなデザインは、変更したくはならない。修正点は写真の画像の構図とサイズ、それと印刷した時にどう印刷されるのか、だ。パソコンの画面を見たままに印刷はされるが、こだわるならば、インクや紙質によっても色が違う。色味が極端に違う訳ではなく、
それこそ、長さでいうところのミリ単位ぐらいの誤差で見える色味が違ってくる。
メールをチェックしてみても、返信があるはずもない。
修正版を別ファイルで作成し、HPに掲載するためのページの文章の方は、もう一度読みながら、微妙なニュアンスを変えて作ってみる。
長文よりも短文の時間がかかる。「余分を削る」という事は、相手に伝えないといけないところを残し、なおかつ、長くなりすぎないよう、同じ意味の同じくらいの音数の言葉であったとしても、あえて、違う事の選択をしたり、考える事が複数あり、最終的にはバランスのいいところで、自分が納得できるところを探す、とても頭を使う時間だ。
「オーナー、何か他にする事ありますか?」
窓から日の光の差し込み具合から、ざっと二時間近くは没頭していたと気づいた。
「これで、いいかどうか見てもらっていい?」
食卓から離れて、視線を春が作業をしていた場所に向ける。
春がやっていた作業後は、綺麗に片づいている。作業している途中でも、どこまでやっていて、どこからやればいいのかを整理整頓できているタイプの子だ。
「はい」
『仕事だからきっちりしている』とは言っていたが、たぶん、仕事以外の他もしっかりできていて身についているから、自然に作業する事ができているのと思う。
「HPの方の色が、もう少し、明るさが欲しいです。具体的には言えないですけど」
苦笑を浮かべながら、自分の意見を言えるところもいいなと思う。
「…そうだよね、もうちょっと考えてみる。まだ、時間があるから」
今の展示を行っている期間が終了してから掲載なので、数日だけ猶予はある。
スケジュールページの予告で展示者、展示内容の文字のみはギャラリー展示が、確実に決定した段階で予告しているので、詳細に関するページは、開催の二日前までにはリンクをするようにしている。
作品の予告と宣伝は、運営をしてく中で大切な仕事だ。
宣伝の仕方によって、対応によって、「また、来たい」「自分が展示で利用したい」と思わせる事ができるかどうかに差ができてしまう。
今回の予告を、確実に決定した時点で宣伝するのは、休日やその他の事情を考えて調整するための時間が必要だと過去にバイトをしていた頃の経験で知っている。
今までの私の経験上では、約一ヶ月前ならば、代わりに入れる人を探し、休日を作って、なるべく職場に負担をかける事なく休む事ができる。
話が少しそれてしまうが、仕事が先で、友人に後から誘われた場合、仕事が優先になるけど、自己申告制のシフトの場合、一ヶ月までに連絡をとりあい、日程を決定してシフト申告日に休日にした時は、多忙期もさけているので遠慮なく休むようにしていた。 詳細ページができるのが二日前になるのは、運営者が私だから、だ。
春が管理を始めたら、もっとしっかり運営していくだろう。
「それで、オーナー」
「何?」
「オーナーは…」
春は、一度視線を私からそらした後に、また私に視線を戻す。
「私の事が、好き、ですか?」
お読みいただきありがとうございます。
お待たせして、すみません。不定期な平日更新になりそうです。
3月15日まで、今月の更新を続ける予定でいます。




