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二枚目 『a fragile article』 【1】


二枚目 『a fragile article』

 

【1】


人の心は壊れやく、強くて美しい。

それは、まるで、壊れやすくて美しい、陶器のようだ。


私、華は、大学を卒業した10年ほど前、趣味での陶芸を続けていた。

その時に、そう感じた事があったのを、あの子を見ていてふと思い出す。

趣味で時々作りに行っていた頃は、自分のできる仕事を探して必要な生活資金を稼いでいた頃だった。

今のように、自分の好きな事を仕事にできる事など、あえて見ないフリをしていた。

『できるかもしれない夢』を叶えるためには、努力が必要で、収入を必要な金額を稼ぐためは、出口の見えない先の見えないトンネルの中を、自分の手元の灯りだけで一歩ずつ確実に進むしかなくて、報われない現実がある事も知っているほどには、夢だけをみられなくなっていた。

 自分の求めている未来と、現実との矛盾がいつも息苦しさを抱え、大人というにはわりきれていない日常を過ごしてきた。


 あの子は、春は、真面目すぎるぐらいに、真面目だな。

 私のためのおかわりの珈琲を、あの子が淹れてくれているのを見ながら感じた。

 「オーナーは、今回、ミルクつけますか?」

 淹れたての珈琲カップから湯気をたてながら、あの子は私に視線を向けてくる。

 「あぁー…うん、お願い」

 頭を使ってデザインを考えていたせいか、いつもはブラックだが時々カフェオレを飲みたくなる。

 「砂糖は、つけなくていいですね」

 「うん」

 ミルクだけも十分にまろやかさを堪能する事ができる。砂糖を加えてしまうと、私には甘すぎてしまう。

 「そうだ、少し散歩に出かけない?」

 「……」

 一応、仕事中ですが?

 と、あの子は視線を投げてくる。

 「えーと、休憩。外の空気を吸って戻って来る、だけ?」

 ゆっくり飲みながら、視線を向けてみると頷くあの子の姿が見えた。

 真面目な事は、ある程度は仕事をしていく事に必要だが、限度をこえると自分の首を自分でしめてしまいかねない。そのあたりの加減は、もっと、この先で少しずつ分かってくる事だろうとも思う。

 いい意味での『手抜き』が、時間内でやるべき事をしていく上では必要で、そのためには、何を絶対にしなくてはいけなくて、後はざっくりでいいのかを判断する優先順位を適度につける事が必要になってくる。このあたりの加減、どうしても私は苦手だ。

 「それだけなら」

 そう言い、あの子は飲み終わった珈琲カップを片づける。

 休憩はとるものだからという理由で、納得しているのだろうと思う。全く嫌だというわけでもなく、ほんの少しだけ嬉しそうに見えるのは気のせいではない。

 私はクスっと笑みを浮かべた。

 「何ですか?」

 「ううん、なんでもない」

 「…そう、ですか」

 不思議そうな表情を浮かべて、軽く首をかしげる。

 あざとく感じさせないのは、たぶん、この子の性格だからだろうな。なんとなく、だけど、そう感じている。 

 そう、私は、この子に対して興味を持っている。

 それは、ただの庇護欲だけじゃない。庇護欲のような母性本能だけなのだと言い切れてしまうような時期は、すでに過ぎてしまっている。

 時々、居酒屋に来ている時に姿を見かけているのを、覚えていて忘れられずにいた部分からして、その頃から気になっていた。

 声をかけた時、不謹慎にも、私は声をかける機会がきたと嬉しく感じた。


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