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番外編1 気に入らない上司を蹴落とす。文字通り

 ダークエルフ准将の華麗なる日々。



 准将に出世したセリカ。


 この歳で帝国准将になるとはすさまじい大出世であるが、この可憐な容姿を見て一目で将官だと見抜くものはいなかった。


 将官服を着、准将の階級章をくくりつけているのにかかわらず、である。

 屈辱である、恥辱である!

 女に生まれた身が口惜しいが、仕方ない、と諦めたりはしなかった。


 セリカを見て侮る下級兵士には罵倒を、後ろ指を指し、せせら笑う兵士は鉄拳制裁と独房送りを命じた。


 判断に困るのは、純粋に勘違いをし、心配してくれるものである。


 希に優しげな声で、

「お嬢ちゃん、どうしたの? パパのお使い?」

 と頭を撫で、良い子良い子してくる兵士がいた。


 悪意がないのは分かるが、将官が兵士に頭を撫でられたとあっては侮られてしまう。そういった人物も左遷させることで対処した。


 ただし、左遷はさせるが、後方の部隊、なるべく生きて帰ってこられる職場に送る。


 頭を撫でてくる兵士は、大抵、妻子持ちなのだ。父親を亡くす子供の顔浮かべると情が湧く。


 セリカはもらった飴を舐めながら私も甘いな、と嘆いた。



 さて、兵士や下士官などはそのように対処すればいいが、問題なのは上官である。

 あるいは門閥貴族どもの師弟、高級士官たちである。

 さすが将校や貴族に折檻を加えたり、左遷させる権力はまだない。

 いつか手に入れてみたいものだが、それは先の話。

 なので、上官からセクハラまがいの言動を受けても耐え忍ばなければならない。


 ある日、セリカは生まれが良いというだけで少将まで上り詰めた男から、こんな口撃を受ける。



「貴官が最年少で将官になったという小娘か。さぞ、上と下の口が上手なのだろうな。軍隊にはロリコンが多い。今後もあごが疲れない程度に頑張りたまえ」



 むかっときたが、この程度の皮肉は言われ慣れている。

 暴力沙汰にはできないが、反撃するつもりであった。



「今後も励みます。ところで、少将、午後から飛行船に乗って戦場を視察するのですよね?」


「そうだが?」


「ならば自分も同行させてください。口が上手いところを見せて差し上げます」


 少将は、ほう、と値踏みをするようにセリカを見る。

 なんと下衆な男だろうか。

 そう思ったが、黙って彼の視姦に耐えると、午後、彼と視察に向かった。



 飛行船から戦場を視察する。

 といっても安全地帯なので、撃墜される心配はなく、これは高級将校の余興でしかない。

 それでも一応、報告書の提出義務があるので、少将は甲板に出ると視察をしていた。

 セリカは彼の後ろから話かける。



「街が見えますな。戦火にさらされた」


「そうだな。ここから帝国通貨をばらまけば、貧民どもはさぞ喜ぶだろうな」


 権高に、民衆を馬鹿にするように発言する少将。


「金貨を一枚ばらまいただけで驚喜するぞ。貧民どもは」


「私ならば銀貨を10枚ばらまきます。さすれば10人喜ぶ」


「良いアイデアだ。さすがは貧民出身の将校。……さて、約束どおり、その身体で楽しませてもらおうか」


 と、振り向こうとする少将にセリカは言う。


「少将殿、金貨や銀貨を飛行船からばらまくより、民が喜ぶ方法があります。聞かれますか?」


「なんだね?」


 と偉そうに尋ね返してくる。

 セリカは振り向いた男の腹に思いっきり蹴りを入れ、こう言い放った。



「それはあんたをここから突き落とすことだよ」

 


 セリカはそう冷たく言い放つと、彼を飛行船から蹴り落とした。



「ぐ、ぐひゃああああ!!」



 と情けない声を上げる少将。

 それを見てセリカは多少溜飲を下げた。

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