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美食家シリーズ

美食家の愛情

作者: 陽向楽

守らなきゃと思ったのが実は強者で、自分への落胆と嫉妬心が膨れ上がっていた。

けれど、よくよく考えればまだ社会人経験3年の女性で。

常に気を張っているのに、悟らせない彼女に気付いたらドロドロに甘やかしたくなった。



朝の台所に味噌と肉の焼ける匂いが充満する。

昨日のうちにタネにしておいた豆腐ハンバーグを焼き、隣の火口で朝ご飯用の味噌汁を温める。

弁当持参になったのは高校の頃からだから12年以上作っているのかと振り返りながら、先に柔らかくしておいたじゃがいもに塩もみしたきゅうりと玉ねぎ人参を加えて混ぜ合わせる。塩こしょうと少量のマヨネーズに僅かに牛乳と酢を入れ味見すれば、ちょうどいい出来だ。詰めるまで少し冷蔵庫へ入れておこう。

焼けた豆腐ハンバーグも皿によけて冷まし、卵焼きを作る。彼女の昨日の顔を思い浮かべると、不思議とにやけてしまうから焦げないよういつもより注意して焼き目を付けていく。

予定していた献立ができ、おかずは弁当箱へ詰めた頃に炊き上がりを告げる炊飯器。開けて匂いを楽しみながら、上下を入れ替えるように混ぜる。僕自身も好きな炊き込みご飯も出来上がった。弁当箱に詰めて少し冷ますのとは別に、今日の朝食を茶碗につける。

味噌汁もお椀に注ぎ、多めに作り何回かに分けて食べる漬け物ときんぴらを皿に出して、納豆とのりを添える。2杯目用のご飯は白米で、既に解凍するためにレンジで温めてある。


出来上がった朝食と2つ並べられた色違いの弁当箱にまた笑ってしまう。僕の大きな黒い弁当箱よりもひと回り小さなオレンジ色の弁当箱。彼女を思い浮かべながら買ったその色はほかの色より彼女に似合うはずだ。

将来的には朝食を2つ並べられたらいいなぁと願いながら湯気のたつ朝食を食べた。


出社して昨日までと何ら変わらない早朝誰よりも早い彼女に挨拶を交わしながら、この弁当を差し出したらどんな反応をするだろうと悪戯心を膨らませた。問題なく午前中が過ぎ、昼食に誘うと素の表情が出る彼女。意外に驚きや呆れが顔に出るなんて、昨日のことがなければ知らなかった。


腹を抱えて笑っていた僕を相手にするだけ無駄と考えたのか、彼女は綺麗ないただきますをして黙々と食べ始める。徐々にほぐれていく幸せそうな表情に僕まで頬が緩む。ああ、愛おしいなと思うままに彼女を眺めた。


お茶を出して少し落ち着こうと思ったのに、あまりにも彼女が可愛らしすぎて告白をしていた。

誇れる程ではないが彼女の口に合ったらしい弁当もちらつかせれば、彼女が入社したころの幼く守らなければと思った時と同じ顔で告白を受けてくれた。


明日の弁当は何にしようと彼女が僕から離れられないよう、がっちり胃袋を掴む計画を立てながら彼女を抱きしめた。



美食家の戸惑いの彼側。

彼女にしっかり落ちたらしい。

昨日天ぷらを揚げたがかき揚げまで作れなかったのが心残り。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 下心丸見えの料理はおいしいのでしょうか。 [一言]  結婚したら作るのをやめていそうです。
2015/11/11 17:51 退会済み
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