知兄ちゃん、絶句する。
「琥珀」
なーに?
「なんか良い匂い、するんだけど・・・」
今日の夕飯、おでんだって京ちゃん、言っていたよ。早く行かないと冷めちゃうよ。
知兄ちゃんは立ち上がると、台所に向かった。
そして、再び台所で立ち尽くした。
「なんか、俺、夢を見ているのかな・・・おでんと炊き込み御飯、俺の大好物が並んでんだけど」
「何を言っているのですか・・・貴方・・・」
食卓の上には、おでん。
炊飯ジャーの中には五目炊き込み御飯。
「酒は・・・麦焼酎かな・・・それとも芋焼酎が良いかな。知センセ、どちらが良い?」
麦焼酎もいいし、芋焼酎も良いんじゃない。猫が酒の銘柄を判るのかといわれそうだけど。実は僕もいける口です。たまに、一口だけお相伴します。
「芋が良いです」
良いチョイスしています。
「さて、食べましょうか。頂きます。」
「頂きます。」
召し上がれ。
「旨い・・・旨いっす・・・俺、これから毎日帰ってきます」
むしゃむしゃと美味しそうに知兄ちゃんは御飯を平らげている。兄ちゃん、ホント美味しそうだねえ。
「いや、飲みに行くとか付き合いとかあるから。ああ、遅くなりそうだったら、連絡して。御飯の用意があるから。」
・・・これ、大家と店子の関係だよね。恋人とか夫婦の関係じゃないよね。
「いんや。毎日帰ってきます。こんな旨い飯食ったの久しぶりです。」
力説すると知兄ちゃんに、京ちゃんは笑った。
食器洗うと知兄ちゃんは言って、綺麗に洗っていた。
何だかんだ言っても知兄ちゃんも一人暮らしをしていたから、その辺りは一通りできる。
その後、京ちゃんはお部屋でお仕事。知兄ちゃんは居間でテレビを眺めていた。
僕は京ちゃんの部屋で居眠りした後、水を飲もうと思って居間に戻った。
そしたら、知兄ちゃんがソファーで居眠りしていた。疲れているんだろうね。
僕は知兄ちゃんの腕の中に顔を突っ込んだ。
一緒に寝よ。兄ちゃん。
「琥珀?おや・・・」
男一人と一匹が抱き合っている姿に京ちゃんは、カメラで写真をとった。
「風邪ひきますよ。知先生」
京ちゃん、無理だよ。知兄ちゃん、熟睡している。
「しょうがないなあ。」
京ちゃんは部屋に戻ると、毛布を手に戻ってきた。
「琥珀。しばらく一緒にいてあげて」
はいです。
ん?京ちゃん、何やってんの?
嘘!!
恋愛音痴=京ちゃん、頑張った。
息子は嬉しいです。
京ちゃんが部屋を出ると、知兄ちゃんの眼が開いた。そして次の瞬間、ゆでダコのように真っ赤になった。
ちなみに。
僕はタコは食べられないけど、ゆでたタコは見たことあります。たまに京ちゃんが茹でているの見ているから。
「キス・・・された・・・琥珀・・・どーしよう。」
がんばれ、知兄ちゃん。