眠れる貴方にくちづけを
琥珀を連れてこちらにきた彼は、再び固まった。
おでんと炊き込み御飯、ダメだったかなあ。
「なんか、俺、夢を見ているのかな・・・おでんと炊き込み御飯、俺の大好物が並んでんだけど」
大好物だったんだ。良かった。
・・・彼のために作ったんじゃない。自分が食べたいから作ったんだ。自覚しなきゃ、ちゃんと。
「何を言っているのですか・・・貴方・・・」
三沢先生は自分の頬をつねっていた。夢ではないんだけどなあ。何なら、明日のお弁当、これにしようかな。
「酒は・・・麦焼酎かな・・・それとも芋焼酎が良いかな。知センセ、どちらが良い?」
焼酎の瓶を手に取り、私は悩んだ。麦も旨いけど芋も捨てがたい。うーん。
「芋が良いです。」
にゃん。
知先生の返事に相槌を打つようになく琥珀。
「さて、食べましょうか。頂きます。」
「頂きます。」
むしゃむしゃと美味しそうに食べる彼に、私は少しだけ安心した。昼間はかなり落ち込んでいたから、心配していたのだ。
まさしくこんな感じだったからなあ。
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「旨い・・・旨いっす・・・俺、これから毎日帰ってきます」
「いや、飲みに行くとか付き合いとかあるから。ああ、遅くなりそうだったら、連絡して。御飯の用意があるから。」
付き合いがあるのだし、毎日帰って食事を共にするのは、難しいだろう。だが。
「いんや。毎日帰ってきます。こんな旨い飯食ったの久しぶりです。」
彼の真剣な瞳に、私の胸の中が暖かくなった。だが、口には出さなかった。
食器洗いを彼に任せ、私は部屋で学会で発表する論文を執筆していた。
一息つくために、居間に向かうとソファーの上で彼は琥珀と一緒に眠っていた。
「琥珀?おや・・・」
男一人と一匹が抱き合っている姿は意外と可愛らしい。私は、携帯のカメラで写真をとった。
「風邪ひきますよ。知先生」
熟睡しているようだ。可愛らしい。
「しょうがないなあ。」
私は部屋に戻ると、毛布を手に戻った。
「琥珀。しばらく一緒にいてあげて」
うんにゃ。
律儀に返事する愛猫の頭を撫でてやる。
お姫様は王子様のキスで眼を覚ましたというけど。逆も許されるだろうか。
王子様の眠りが穏やかであるように、お姫様がキスするのもありだろうか?
私は眠る彼の唇に、軽く自分の唇を合わせた。
離れる時、改めて彼の顔を見たが、穏やかに眠っている。
私は部屋に戻った。




