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方角屋奇譚  作者: mahu-
6/9

ウィンドラ編3

危ない、これ三つに分けてよかったーーー!!

分けなかったら前の話が大変長くなってしまうところでした(汗)



 






 長時間にわたって、蛇龍さんに自分は敵じゃないんだと説得したおれはもうクタクタだった。


どんだけ説明すればいいんだ・・・必ずと言っていいほど身の危険を嘆くわ疑心暗鬼にもほどがあるだろ!心配性の蛇龍なんているんだなぁー。

龍っていったら巨大な体に鋭い爪や牙を有し、魔力はトップクラスの生き物だろうに。でも龍は昔話でよく勇者とかに狩られているし、実は怖がりなのが多いのかもしれない。



『つまりじゃアキト。我をハントしに来たのではなく、財宝目当てでもなく、ウィンドラとかいう種族の幼子を探していただけ、と?』



 何度も言っているようですが、それで合ってますよ・・・はぁ。

お前呼ばわりされるもあれなので名前は先に教えておいたが、向こうは名乗ってないんだよなぁ。




『ため息などつくのではない!それではまるで妾は理解力がない蛇龍みたいではないか!

まったく、それならそうと早く言っておれば良かったものを』



・・・・・すいません、でした。



『ふん!と、ともかく、カイルとやらが我らの巣にいるというのはあい分かった。先程から泣き声に似たものが聞こえてきておったわ。この声の主を見つければよいのであろう?』



 そうなりますね。

あ、そういえば蛇龍さんがときどき”我ら”とおっしゃっていたのですが他の蛇龍さんたちはどちらにいるので?



『そ・・・そんなことをいったかのぉ。わ、妾は知らんのぉ~・・・』



突然とぼけ始めたなこいつ・・・絶対怪しい。

何か隠したいことでもあるのか、やけに声がどもって聞こえてくる。

この蛇龍以外のやつがカイルくんをさらっているという可能性もなくはないし、聞く価値はあるか。


ほらほら、隠してもしょうがないでしょう、吐けば楽になれますよ。




『うぅ・・・べ、別に外に出てわけの分からない場所に飛んでしまうのが怖くて巣から出て行かなかったわけじゃないんじゃぞ?ぼっちになってしもうて、寂しかったわけでもないんじゃからな!!』




あぁ~、聞きたいこと以上のことが聞けてしまったな~うれしいな~。

ベタすぎて苦笑いだよもう。


それで、他の蛇龍たちはどこに行ってしまったのです?この巣には本当にあなたしかいないので?



『妾の知る限りではどこに行ったのかは分からぬ。ザイロトルの変異線を越えた先は誰にも知ることはできんじゃろう。

けれど五百年に一度ここにつながる道が出来るらしく、ときどき様子を見に来てくれるやつもおるな。それも今では誰も帰って来ず・・・ヨヨヨ』



 今度は泣き出しちゃったよ・・・。

話が進まないので一度姿をお見せしてもらってもいいですかね?



『おぉ、良いぞ!妾もそう提案したかったところじゃ。今行くからそこを動くでないぞ?妾への恐ろしさのあまり帰ってしまってはいかんからな?絶対じゃぞ?』


分かりましたから早く来てくださいね~。


 おれも蛇龍の扱いが上手くなったもんだ。悪い方向へ考えそうになれば話題を変えて話を元に戻し、また違う心配をし出したらフォローして話を元に戻し・・・。

ずっと頭の中でそんなやり取りをしていれば上手くもなるか。




ドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!




 盛大な地響きが洞窟内を鳴り響く。まるで地震が起きたかのように壁が震え振動が足を伝う。

壁に亀裂が入ることはなく、この《蛇龍の巣》はかなりの堅さの岩盤が削られて出来たのだと分かった。

ズルズルと地面をこすった音がこっちに迫ってくる。それに何か違う音も混じっているような。

音のする方へ目を向けながら待っていると、暗い闇の向こうから巨大な蛇の顔がヌッと現れた。




『待たせたな!我が名は、タ、タルラという。蛇龍の立派な雌じゃ!アキトよ、よろしく頼む。呼び捨てで呼んでもかまわんぞ』



雌だったのか・・・っていやいや、何この合コンみたいなノリは!はぁ、もうやだー。


「こちらこそよろしく。それよりも、タルラにカイルくんを探すのを手伝って欲しいんですけど」



『よかろう。その前にちと気がかりに思っていることがあるのじゃが、良いか?』



「はい、なんでしょうか」



『妾は巣の中をアキトと念話で話しながら散歩をしておったわけじゃが、鳴き声が小さくも大きくもならずわしの後を追ってきているようで怖いのじゃ。・・・何とかしてくれぇ!』



『こ、これが巷で噂の”すとーかー”というやつなんじゃろうか。なぁ、アキトぉ・・・』





 そう言って鱗をガチャガチャと鳴らし始める彼女(?)。ちょっと土埃が舞いますからやめてください!

巷で噂って、あなたここから出てないんでしょう!噂もクソもないんじゃ、『友からそう言った話を聞いたのじゃ!世俗に疎いとは言わせんぞ!』・・・さいですか。



 五百年単位で聞いた話なのだから大差ないのでは?とは言い出せず、あえてスルーするおれ。



「ということは、音はタルラの後ろから聞こえてくるんですか?だったらおれが様子を見てくるので、分かれ道で後ろに回れるよう移動してください」



『あぁ、では分かれ道まで向かうとしよう。”すとーかー”はとても危険だそうじゃからき、気を付けるのじゃぞ』



ちょっと行った先に二手に分かたれた道があったので、片方にタルラを誘導し移動し終わるのを待っていると、






「うわーーーーーーん!帰りたいよーーーーーー!!ママーーーー、パパーーーー!!もう遠くに遊びに行ったりしないから許してよぉ~~~~~~~!」




いきなり悲鳴が聞こえたから心臓が飛び出るかと思ったわ!



 蛇龍の体がすり抜けられるくらいの通りになっているから、こっちに音が伝わりにくくなっていたんだな。鱗の間に一人の少年が抜け出せずグッタリとしているのが見てとれた。


 おそらく鱗を背もたれにして休憩していた時に、タルラが移動を開始してその拍子に隙間に入ってしまい出るに出られない、といったところだろう。

でもこの子、だいぶ前から叫び通しってことになるんじゃないか?すごい胆力をお持ちで。あのマッチョなケイロンさんの息子なだけはある。



 移動を止めるよう念話で伝え、おれは事情を説明した。ストーカーではなくてホッとした様子だった。

んじゃ、カイルくんを見つけたことだし帰るとするかー。しかし”拾音”の魔法で外までの音を辿って歩いていくのは手間だし、どうするか。




『乗っていくかの?鱗の隙間なら人型が入ることも出来よう。特別に外の変異線まで送ってやろう』




 ありがたく乗っていくことにしたおれとカイルくんは鱗の隙間に入って、動き出すタルラに身を任せた。

どうやら上り坂に向かって移動しているようだ。


 しばらくして、広々とした巨大な空間に到着した。

そこには中心に大きな泉があり、全体的に鍾乳洞のような印象を与えていた。天井には泉の真上に大きな穴が空いていて、夕暮れ時の太陽の光がこの空間全体を照らしとても美しい眺め、絶景だった。

乳白色の岩々が燃えているんじゃないかと思うほどの鮮やかさ。この光景にはカイルくんも口を開け目を皿にして見つめていた。




『ここが妾たちの住む、《蛇龍の巣》の生活拠点じゃ。泉は魔法で永続的に地下から汲み上げておる。では外に出ようかの、しっかりと掴まっておれ』




 上に空いた穴を見上げ両翼を拡げ始める。翼の膜は日の光を受けて金色に輝き、一回一回の羽ばたきが神秘的ですらあった。淡い藤色の鱗も相まって彩りを添えている。


ゆっくりと上昇を開始し、穴をするりと抜けて大空へと飛び立った。



 外の砂嵐はとっくにおさまっており、地平線の向こうまで見渡すことができた。沈みゆく太陽が闇に落ちていく。月はうっすらと姿を現し始めていた。



『妾はこの沈みゆく夕日を見るのが一番好きでのぅ。これを誰かと見たいと思っていたものじゃ』




 変異線前で降ろしてくれた蛇龍ことタルラは、最後におれたちにとんでもないことを話していきました。


『今度は我からアキトに会いに行きたいのぉ、この姿では無理じゃし・・・変化でも試してみるか』




ボワァァァァンッッ!!




 漆黒の長い髪、日本の着物のような鱗と似た色の服を着た姿で、艶めかしい肌を露出した美しい女性になってみせた。



「どうじゃ?これならアキトの元へ行くのも容易かろう?」





「・・・・タルラ。それをもっと早くやって後ろを確認していれば、おれの仕事がすぐに終わったのですが」



「あ・・・・あー、終わりよければすべて良しじゃ!ほれ、妾の鱗を持っていくがいい。アキトがこれを持っていれば妾の膨大な魔力を使い、追跡して飛んで行けるからの!で、ではまた会おうぞ-っ」




都合が悪くなって逃げたな。あの蛇龍めー!




 カイルくんを無事ケイロンさん夫婦の元に送り届けにリンデーンに跳び、ケイロンさん直伝の鉄拳がカイルくんの脳天に直撃したのを見届けた後、おれは報酬を受け取って岐路に着いた。






 

「ただいま、アイリー。今日は特に問題無かったか?お客さんに何かされたとかはないか?」


ブンブンッ    ガバッ


「そうか、安心したぞ。っておい、抱きつくなって。全身砂まみれだから汚いぞ?シャワーを浴びて、タルラの鱗を入れる袋を探して・・・夕飯の準備を頼めるか」


コクッ   タッタッタッタッ



タルラさんが随分面白いキャラになってしまった・・・

次はそろそろクマ野郎さんを出したいな、出せたらですが。



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