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方角屋奇譚  作者: mahu-
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ウィンドラ編2

 






 ―――跳んだ先は果てしなく広がる砂漠地帯だった。


ゴゥゴゥとうなりを上げる砂嵐、周りを見渡しても砂、砂、砂。視界を砂で覆われ前が見えない。背後にかろうじて岩場らしきものが見えたので、避難できる場所を探すためそこへ向かうことにした。


鞄に入っていたタオルで口元を覆い、岩場に沿ってひたすら歩く。


カイルくんの姿はどこにも見えない、当たり前だが。

これは迷子探索史上、一番危険なんじゃないか?本当に見つかるのかよ・・・。


 しばらくすると、岩場にまるで綺麗にくり貫かれたように空いた洞窟があった。試しに小石を穴に投げ入れてみると、音が跳ね返ってこない。奥は結構な長さで続いているらしい。

風が止むまでこの中で外の様子を見てみるか。




 ごおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!




 砂嵐ってまるで獣が吠えまくってるような音がするんだなぁ。

怒った男の叫び声とか、泣き叫ぶ女の悲鳴だとかいろんな妄想を膨らませていると、



ごおおおおぉぉぉおおおおぉぉぉおおおお・・・・タ・・・ヨ・・おおおおおお!!!




ごおおおおぉぉぉおおおおおお・・・・タス・・・・・テ・・・・おおおお!!!




ん?洞窟の中から誰かの声がした気がする。


 おれは洞窟内から聞こえた声をはっきりと聴くため、一方向の音を拾いやすくする”拾音”の魔法を唱える。この魔法は夜にモンスターに襲われないよう足音や遠吠えを聞きやすくするために使っていた”聴覚拡張”の魔法の応用だ。聞きたい音・声だけを聞く際に大いに役立っている。



 聴覚を最大限に研ぎ澄ませたおれは、洞窟からの声に文字通り耳を傾けた。





・・・・・・・・だれか助けてよぉ~、怖いよぉーーーー!うわ~ん、わ~ん!!





 おぅおぅ、元気に泣いてるのはカイルくんじゃないか?やんちゃな子だって聞いてたし、洞窟内へ冒険に出かけちゃったかー。


冒険に出かけるときはだなぁ、常日頃から携帯電話と予備の電池を・・・って違う!昔のおれは冒険してたんじゃなくて迷子だっただろ!世界各国の僻地で迷子になるのもどうかと思うが・・・。


あぁ~過去を思い出すと鬱になってきた・・・。とりあえず中に進もう。




 天井が10メートルはありそうな洞窟の中は一本道ではなく、途中で二手に分かれたり、多くて5つまで分かれたりした。しかし”拾音”の魔法のおかげで道に迷わずカイルくんの鳴き声に向かって進んでいく。

灯火ともしび”の魔法を剣に付いた宝玉にかけて同時に用い、視野を確保しながらだ。魔法を冒険者時代で師匠から教わっておいて本当によかったと常々思う。


 でも覚えるなら、RPGでよくある巨大な火柱の魔法とか吹雪を発生させて凍りつかせる魔法とかの方がよかったぜ。どうして覚えたのがこう、狩りに特化したものばかり・・・汎用性はあるけどさ、夢ってもんが・・・。



 小一時間ほど歩いたが、まだカイルくんに会えないのか?

カイルくんらしき子供の声はひっきりなしに聞こえてくるんだが、近づいてるはずなのに声が大きく聞こえないのはおかしい。これはどういうことだ?

そしてこの洞窟、やたらと分かれ道が多いな。魔法が使えなかったら迷って飢え死にしているところだぞ。


歩きながら疑問に思っていると、照らしていた魔法の光が突然掻き消えた。



『お前はここで何をしているんじゃ』



・・・!?

頭に声が響いてきた!くそ、どこにいる!



『驚くのも無理はない、我も人型と話をするのは何千年ぶりか。実はめっっちゃ緊張しておる。それに姿を見せておらんじゃろう?かなりシャイなのじゃ』



 緊張してらっしゃるんですかー・・・って俺の考えてることが読まれてる?そんなバカな。


『今お前の考えていることは読み取れるが、心の内までは読み取れんでな、安心せい。

して、お前はどうして我ら《蛇龍》の巣の中におるのじゃ?よもや、財宝目当てか?しかしあるのは脱皮した皮くらいしか・・・まさか、我らをハントしに来たのかの?』



いや、蛇龍を見つけたいという依頼が来てはいるが、おれが倒したいわけでは・・・。



『嘘じゃ!心の中では我らを倒したくてウズウズしとるに決まってるのじゃ!ドラゴンと名がつけばすぐに倒そうと考えるのが常識だと聞く。

くそぅ、妾の命もここまでか・・・トホホ。いっそ可憐に踊りを舞ってから、おっちぬかのぉ』



 え、死ぬこと前提!?どんだけネガティブなんですか蛇龍さん!

それに踊りなんて踊ったら崩れた岩の下敷きになっておれ死んでしまいますって!

いえね、探しているウィンドラの子供がいてですねー、ここに迷い込んだようなので連れ帰りに来ただけなんですよ。



『本当かの?なぁ、本当に本当に本当かの?信じてよいのかの?なぁなぁ~』




ちょっと面倒くさい蛇龍であった。






 

・・・カキカキ

【あきと まだ かえって こない】


カキカキ・・・

【おそい な 】



~蛇龍~

大きな体にするどい牙、天高く飛べる翼を持っています。

翼はいつもは鱗の下にしまっていて、巣の中では蛇のように蛇行して移動します。

移動しにくい&ムシャクシャした場合は岩盤砕いて通ります。道は作るもの!



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