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方角屋奇譚  作者: mahu-
4/9

ウィンドラ編1

 






 んぅ・・・眠い・・・けど・・・なんか息苦し・・・はっ!

この人肌のような温もり。触るとふさふさした感触。


わっさわっさわっさ。


なにやらやたらと動き続けているものが布団の中にあるようだ。


「ア~イ~リ~、おまえのベッドはこの間用意したはずだろう。なぜいつも使わない」


バサッ、テッテッテッテ。

えっへん、とでも言いたげな表情を浮かべ胸を張っている。


なぜ誇らしげなのかさっぱり分からん。やり遂げた!みたいな反応をされてもなぁ。


「ほら、さっさと朝飯を作るのを手伝え。それと店番よろしく頼むな?」


コクッ


よし、今日も一日頑張ろうか!





 赤い紙で数十件ある迷子捜索の中のうち、簡単に済ませられるものをちゃっちゃと済ませ、かなりめんどくさい迷子を最後にやるとしよう。


 ウィンドラという種族なのだが、風を自由に操ることができ頭に角が生えている種族である。

角には風を操る力が宿っており、子供の頃はまだしっかりと生えていないために制御できず、風に乗ってどこかへ流れて行ってしまうらしい。

 数時間前にいなくなったその子は、お母さん方が毎日頑張って見張っている包囲網を突破してブンキを越えてしまったと。今まではブンキを越えたら諦めるしかなかったそうだ。



 そこでウィンドラの依頼主がいる都市リンデーンに向かった。

高い風車塔が立ち並び、人がせわしなく飛び回っている。用水路に風車の力で水が流れ木々がそびえ立つ、自然と融合したかのような風景である。

ウィンドラは地上に住まいを持たず、木の上に家を建てて暮らしていた。ツリーハウスってやつか。おれも一度はそんなところで暮らしてみたいもんだ。

依頼主の家は自力では到底無理なので、前もって聞いておいてように依頼主の知り合いと待ち合わせをして送ってもらった。


頭に立派な角さえなければ誰もが目を見張るであろうイケメンである。


「ニンゲンというのは空が飛べなくて不便そうだなぁ。君のきれいなおでこに角は生えてこないのかい?それに比べてぼくの角はねぇ、」


・・・やたらと自分の角を自慢してこなければ、というおまけつきの。



 うっとうしいんじゃ、この野郎!!

・・・あぁ、こんなやつ人間にもいたなぁ。自慢したがりで他を見下すイヤな性格な奴ってのは種族関係無くどこにでもいるらしい。


彼の話に適当に相槌を打ちながら、ようやく目的地に到着した。

はよぅこの男から解放してくれんか・・・


 おれとムカつくイケメンが依頼主の家の前でガヤガヤと話していると、すだれに似たところから逞しい体つきの男が現れた。


「あなたが依頼主のケイロンさんですか?」


「あぁそうだ。待っていたよ方角屋のタキガワアキト」


「はい、ケイロンさんのお子さんが迷子になったと・・・書かれていたのですが・・・」


フルネームで呼ばれるとちょっと萎縮してしまうな・・・


「それで合っている。知り合いの子供も君に探してもらって大変喜んでいたな。タキガワアキト、君はウィンドラの中で話題になっているぞ?諦めていた子供が帰ってくるとな!ガハハ!」


笑い方も男前ですよケイロンさん。

気さくな人で安心したぜ、こっちとしては。


「ここが『ザイロトル』でなければ探しに行くのは比較的簡単だったらしいんだが。祖父が言うには、故郷は風の循環が規則正しく成り立っていて流された子供は必ず帰ってきたそうだ」


「なるほど。ではこの場所は風の終着地が存在しないんですね?」


「あぁ、ここは風が分かたれる場所。移動には便利だが子供はちと危険なところだ」


「よく分かりました。ではお子さんの名前と特徴を教えてもらえますか」


おれの言葉を聞いて、ケイロンさんは快く話してくれた。



 カイルという名前の男の子で、角がおでこから先っぽだけ出かけているやんちゃなお子さん、か。

ウィンドラの子供は大抵角が生える寸前というのが多い。一番聞きたかったのは名前。次にケイロンさんの子供,性格などの要素で補助することによって見つけだすことができる。


 ようはどんな種族で誰のなんという名前の子供か、これをおさえればクリアだ!

元の世界でも子供のころ、何度アバウトに書いたメモ紙でたどり着けたことか。あれで行けたのが奇跡だ、というのもあったし想像力で跳べるおれの能力さまさまだな。


「ではお子さんのカイルくんを探してきます。見つかったらご連絡いたしますね」


「了解した。息子をよろしくお願いする」


深々と頭を下げるケイロンさん。はりきって行ってきます!



 ブンキの前までケイロンさんとその奥さんに見送られ、おれはカイルくんの居る所へ勢いよく跳んだ。







 



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