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二つの人間が

次の日。ナイミーはまだ南極で暮らしていた。

「ツトムくん。おはよう」

なんとか気分が落ち着いたナイミーは、ツトムに声をかけた。そして、

「私、やっぱり自分の町に帰りたい」

ツトムもそれを分かっていたようだった。ツトムも言った。

「うん。僕も帰してあげたい。でも、このままじゃだめだと思うんだ。植物も動物も、共に笑っていけるといいなって思ってるんだ」

ナイミーも同意した。やはり、互いに行き違い思い違いをしているようではいけない。なんとかして、植物と動物を再び平和にしていかなくてはならない。お互いは考えていることが似ていた。

二人は「対植物」のデモを取り止めようと、ナイミーを誘拐した、あのデモグループの場所に行った。アジトには、相変わらず植物人間を倒そうと言わんばかりの、ポスターが張り巡らされていた。あまりの多さにツトムも驚いた。中では人が話し合いをしているようだった。

「やっぱり、東京を襲いましょうよ」

「いやいや、北京だよ北京」

「なにいってるんだ。ニューヨークだろ」

それぞれが攻撃する場所を話していた。しかし、ナイミーにも、ツトムにも、物騒な話をしているようにしか感じなかった。

「よし。多数決をとる」

全員が一斉に静かになった。ナイミーとツトムは、自分の心臓の音が聞こえそうなほど静かになった。

「まず、東京………三名か」

いったいどれほどの人数がここに加盟しているのかは知らないが、若干の人数で済んだことで、やや安心した。

「次、北京…………七名か」

「ロンドン………なし」

「ローマ…………なし」

「ニューヨーク…二十五名」

「じゃあ、ラストだ」

ツトムは生唾を飲んだ。このまま、ニューヨークに決まってしまうのは、あまりにも、残酷ではないか。

「最後、全部!」

おもわぬ言葉にツトムは驚いた。まさか、

「七十四名。決定だ!」

一斉に全員がどよめいた。一番決まってはいけない結論に達した。今でも世界的な都市である、東京や北京、ニューヨークやロンドンは、かならずしや戦火に見舞われる。そのようなこと、断じて許されることではない。ナイミーは怒りで心が満たされる。ついに飛び出した。

「ああっ。おい!」

遅かった。扉は開かれ、敵陣の中にナイミーは突進していった。

「都市に攻撃なんて、絶対に許さないんだから!」

男たちは笑った。

「ははは!女子一人で何が出きるんだよ!」

もちろんそのとおりだ。たった一人の力でなんとかできる人数ではない。ナイミーは袋叩きにあい倒れた。

「大丈夫?」

ツトムが駆け寄った。かなりの怪我をしていて、とても無事な様子ではなかった。

「み、水……水、持ってきて。私たち植物人間は、水の力でパワーアップするの…。お願い、水…」

ツトムは返事をし、すぐに近くの氷河にいった。冷たい水を、なんとか容器に入れ、ナイミーのところに持ってきた。

「ナイミー。それ!」

ツトムはナイミーに水をかけた。水はナイミーの全身にかかった。一瞬、冷たく感じたが、その後、体に力がみなぎってきた。

「デモなんて、絶対にさせないわ」

力はとうに男たちを越え、男たちを倒していった。一人、椅子に座り、偉そうにしている男がいた。

「ほう。なかなかやるじゃねぇか」

たばこを吸っていた男が、かなり偉そうな態度をして言った。

「ふん。植物人間は水をやると強くなるのか。いい勉強になったぜ」

そういうと、灰皿にたばこを押し付けて続けた。

「だがな、そうやってパワーアップできるのは、植物だけじゃないんだぜ?」

「どういうことよ!」

「まぁまぁ、落ち着けって」

そういうと、再びたばこを取りだし、火をつけた。

「人間の筋肉の中で、休まずに動き続けるものって、何か分かるか?」

ナイミーに聞いた。するとナイミーは、

「心臓じゃないの?」

「正解だ。その、休まずに動き続ける力を、利用するんだ」

男によると、心臓を動かす、横紋筋の力を、化学的に取り出したらしい。そして、その能力を全身の筋肉につけたらしかった。

「それが、どういうことか、分かるか?」

「???」

ナイミーには、分からなかった。すると、男は、ナイミーの方に近づいた。

「つまり!ずっと百パーセントの力を、出し続けることができるのさ!」

そういうと、ナイミーの頬に、拳を打ち付けた。ナイミーの顔に傷がつき、痛みを帯びた。

「許さないから!絶対に!絶対に!」

ナイミーも拳を打ち付けた。だが、その男は、痛みを示さず、ただ立っていた。

「どうした?それでおしまいか?」

パンチ、パンチ、キックキック。いくら技を出しても、軽くかわされてしまった。

「おらおら、どうしたどうした?」

相手は余裕だ。どうしようもない。

「ブオン。ブオン」

前に男二人を倒したこともある、エネルギーの技。球は大きくなっていた。

「ほう。そんな技もできるのか」

男は少し、驚きを見せた。

「余裕でいられるのも、今のうちよ」

エネルギーの球を、思いっきり男に投げつける。しかし、

「ニヤッ」

不気味な笑顔をして、言い返した。

「それはこちらの台詞かも知れないなぁ」

そういうと、その球をいとも簡単に打ち返した。思わぬカウンターを受けたナイミーは、跳ね返すことが出来ず、大爆発を食らった。ナイミーが倒した、数人の男性も巻き込まれ、吹っ飛んでいった。ツトムは何とか無事だったが、何か吹き飛んだ時に当たったのか、怪我をしていた。

「大丈夫なの?」

ナイミーは心配そうに尋ねた。

「大丈夫だ。それより、頑張れ!勝つんだ!」

ツトムは応援をしてくれた。何とかしないと。ところが、その様子を見た男が、げらげらと笑いだした。

「はははは。お前は動物人間のくせに、植物どもに味方をするのか?変わったやつだぜ!お前も本当は恨んでるんだろ?植物のこと?違うか?」

「………」

ツトムは答えなかった。

(恨みがないと言えば、嘘になる。でも…)


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