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植物人間

夏の午後、暑いなかで、穏やかに暮らす一家がいた。エナジー家だ。アース・ケア共和国の、東アジア州に住んでいる。昔動物人間は、産業革命から、木を切り崩し、地面を掘り起こしていった。機械を使い続け、気温を上げ続けた。今自分達、植物人間が回復させていた。木は徐々に植えていった。地面は再び蘇生させた。植物人間は、その生い立ちから、二酸化炭素を吸い、酸素を出すため、空気はきれいになっていっている。そんな中、みんなで旅行へ行くことになった。この家の長女のナイミーが、探し物をしていた。

「あれれぇ?ないよぉ。ないよぉ」

「はぁ?またなにか探してんのか?ナイミー」

ナイミーの長男。ナイミーより、三年はやく生まれた。(ちなみに、植物から人間に変わったことより、寿命も人間と一緒になった)

「おいおい。もうすぐ出発するぞ」

父が呼びかけている。

「あっ。あったぁ!」

探していたのは、リボン。

「なにょナイミー、もっと大切なもの探してるのかと思ったじゃないの」

「ほんとうだぜ」

父や母、兄が呆れ顔で見ていた。しかし、ナイミーはそんなことは気にせず、我が世界に入り、リボンを結んでいた。今日は一ヶ月前から楽しみにしていた、家族旅行の日だった。行くのは、アメリカ州の「はわい」というリゾート地。あまり暑いのは好きではないが、どこか遠くに旅行に行けるのがうれしかった。

「ねぇねぇ、どれくらいで着くの?お兄ちゃん?」

「知らねぇよ。ま、ハワイだからな。時間かかるぞ〜」

長旅も旅行の醍醐味の一つだ。嬉しさに満ち溢れて、輝かしい笑顔を見せていた。

ハワイに行くのに、ほぼ一日かかった。やはり、環境に優しい乗り物に乗るため、あまり早くはない。ナイミーはハワイについた途端、元気が二倍になった。植物の特性だろう。楽しみにしていた、綺麗な海、明るい空がそこにはあった。だが、

「ズキュン。ズキュン。ズキュン。ズキュン」

銃声が聞こえた。世界のリゾート地が、いっきに戦場と化した。銃声が聞こえた側を見ると、ピストルを持った男が数人、恐ろしい剣幕をして、立っていたのだ。そのうちの一人が、ナイミーの方にやって来た。

「よぉ、かわいいお嬢ちゃん。俺たちさぁ、南極から来たものだけど。ちょっと、俺たちに協力してくれないかなぁ?」

男はナイミーの腕を掴んだ。男の力強い手は、ナイミーがどれほど力を入れようとも、外れることは無かった。

「いやっ!離して!離してっ!」

男たちはナイミーに銃を向けた。

「さぁ!この小娘を助けたけりゃ、いい車を用意しな!」

ナイミーを人質にして、彼らは叫んだ。

「こんな卑劣な手を使いよって!分かったぞ!貴様ら、動物人間じゃな!」

近くにいた、長老のような老人が、彼らに向かって言った。

「へへっ。確かに。卑劣なことをするのが、俺たち、動物人間の特徴だ。よくご存じなら、俺たちにする対処の方法も、分かっているんだろ?だったら、さっさと車を用意しな!」

今度はその老人に、銃を向けた。しかし、老人はぴくりとも動かず、その銃を向けた男を直視していた。

「ま。そう慌てるでない。もうすぐ車を持ってくるわい」

そして老人は、この状況をもっとも怖がっているはずの、ナイミーを見ながら言った。

「お嬢さんや。もうすぐで車を持ってくるから、それまでの辛抱じゃぞ」

ナイミーはただ首を上下に振ることしか出来なかった。

それから、五分ばかり時間が流れたが、ナイミーには、一時間にも、二時間にも感じられた。一秒が長いのだ。

「まだかよ!車はぁ!」

男は銃口を、ナイミーのこめかみに押し当てた。

「分かっておる。若い者に取りにいかせたから、もう少し辛抱せい」

老人はいたって慎重だった。何か策でもあるのか、ナイミーはただそれを信じるしかなかった。やがて、一台の車がやって来た。

「さぁ!車が来たぞ。約束どおりに、その子を離せ!」

しかし、男たちは、

「俺たちは、『この子を助けたければ、車を用意しろ』と言っただけで、誰も車を用意したら、離してやるとは言ってねぇ!」

そう言って、嫌がるナイミーを、そのまま強引に車に乗せた。

「やっぱりそういうことじゃったか」

その老人は、やはり慎重に言った。

「なんだなんだぁ?老いぼれが俺たちとやりあおうってかぁ?」

老人は何か構えをしていた。手を合わせ、精神を集中させた。

「わしらは元は雑草じゃった。人どもに踏まれ、雨嵐に打たれ、アスファルトやコンクリートの上にも咲いた。そうして、わしらは強くなったのじゃ」

手にエネルギーを溜め、手が光輝いた。老人はパンチを繰り出した。光が手の残像を残しながら飛んでいった。

「ギュルルルルルル」

男はその音に驚き、車を発車させた。しかし、スピードは圧倒的にパンチの方が早い。

「バァァァコォォォン」

車が勢いよく歪み、煙を出した。

「ババババババババ」

ヘリコプターが空を飛んできた。

『お〜い。大丈夫か?』

マイクの声が聞こえた。まさか、ヘリコプターで逃げるのか。

「助かったぜ」

ナイミーを縄でくくりつけ、そのままヘリコプターから垂れた梯子を上っていった。

「させるかぁ!」

老人は再びエネルギーを溜め、同じ技を出した。しかし、上にはあまり伸びず、ヘリコプターには届かなかった。

「じゃあな!」

高らかに笑い、去っていった。


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