1.序幕
魔王は死した――。
静寂の時は短く、魔界における後継者争いの幕が上がる。
「ガゼル様、急いでお逃げくださいませ」
「何故だ!」
手負いの状態に陥り立ち尽くすガゼルは、自らに仕える側近アークに冷酷な眼差しを向けそう叫んだ。
魔王の血縁となるガゼルは後継者として最も近い存在となる反面、その地位を狙う魔族にとって恰好の標的でもあった。
竜獣種や下等魔族などは眼中にないアークであったが、上位種となる魔人デビル族、更には魔王直属の戦闘集団魔族四天王の裏切りに警戒を強めていた。奴ら特有の魔気を感じ取る力は既に魔王の死を察しているに違いない。
「失礼ながら、今は深い傷と魔力の回復が急務です。どうぞお許しを」
主の問いかけに対し全て答える事無く、まるで忠誠を覆す様にアークは立ち上がる。深紅に染まる血だまり、異臭を放つ無数の屍に目もくれぬままただ一点を見つめ。
「アークっ!」
ガゼルの叫びと同時にアークは魔術を放つ。
「レオフリーズ キュラムゲート」
僅か数秒制止したガゼルの身体を迷いなく暗闇の崖下へと突き落とす。
落下したガゼルの身体は突如現れた眩い光の空間へと吸い込まれ、消えゆく姿と共にゲートは閉じられた。
ヒューマンと魔族のハーフであるガゼルが最も身を隠せる場所、そして秘めたる力の元へ。
彼はアークにより地球と称される小惑星へと転移された――。




