第173話「天空市役所、防災ドローン緊急テスト!」
【朝・ひまわり市役所 屋上】
初夏の風が抜ける屋上で、勇輝は折りたたみ式の操縦端末を調整していた。横では、美月が資料を抱えたまま不安そうにそわそわしている。
「主任、本当に今日やるんですか? 天空国から借りた“高次元防災ドローン”、まだテスト1回しかしてませんけど……」
「今日を逃すと、天空国側の担当官が帰っちゃうんだよ。ほら、美月、マニュアル読んだら意外と簡単そうって言ってたじゃないか」
「読んだら逆に怖くなったんですってば!」
美月が叫んだ瞬間、空からふわりと光の扉が出現した。
「おはようございます、地上都市の皆さま」
現れたのは天空国の技術官――淡い青の制服をまとった青年・ライゼル。
「本日の実証実験、予定通り行います。心配いりませんよ。ドローンは高度2,000メートルでも暴走しない設計です」
「いや、そこ心配ですけど!!」
美月が両手を広げて抗議する。
【テスト開始】
「――離陸、開始します」
勇輝の声と同時に、球体ドローンがゆっくり浮かび上がる。淡金色の魔力ラインが走り、空気が震える。
「すご……市役所装備でここまで未来感あるの初めて見た……!」
「美月、実況してないでデータ取って」
「は、はい!」
だが、順調だったのはここまで。
ピピッ――と端末が鳴り、画面に赤い警告が走る。
「主任!? ドローンが……太陽光を“魔力源”だと思い込んで、自己強化モード入ってます!!」
「なんでそんな学習するんだよ天空の技術!!」
ドローンはキュインと音を立て、魔力翼を展開。瞬間、風圧が屋上を吹き抜け、美月の書類が盛大に宙へ舞った。
「きゃああああ! まだ提出してない防災計画が——!!」
「後で回収する! 勇輝、制御は!?」
「ダメだ、パワー上がりすぎ! 手動制御に切り替える!」
【空中大追跡】
ドローンは屋上から離れ、ひまわり市の上空へ直進。
「ちょっ……あれ、市の上空で暴走したら大問題じゃないですか!!」
「だから今止めるしかないんだよ! 美月、空域マップ開いて!」
「了解っ!」
勇輝の指が端末を素早く走り、ドローンの進路に強制停止コマンドを送る。
しかし――
ピッ……『拒否。自己判断優先』
「拒否!? そんな市役所みたいな返事するな!!」
「課長!? あれ、温泉街の方向向かってません!!?」
「やばい、このままじゃ露天風呂ののれん全部吹き飛ばされる!」
【最終手段】
「……ライゼルさん! 天空国の“上書き魔法”で止められますか!?」
「できます。ただし――この場で詠唱すると、ちょっとだけ眩しいですが」
「お願いします! 市民の平和の方が大事です!」
ライゼルが杖を掲げると、青白い光が空へ向かって走り――
バシュッ!
飛行中のドローンが一瞬で停止。
そのまま無害化され、屋上へふわりと帰還してきた。
「……止まった……!」
「ほっ、心臓に悪い……!」
【収束】
ドローンが静かに着地すると、勇輝は深い息をついた。
「今日の反省点。――“天空国製の機械は調子に乗るとすぐ自己判断を始める”。以上」
「メモっときます!!」
美月は散らばった書類を抱え直し、またため息。
「でも、見ました? 市の上空であんな高度な防災テストできるなんて……私たち、もう普通の市役所じゃないですね!」
「普通じゃないのは昔からだよ」
勇輝が苦笑すると、美月は元気よく胸を張った。
「じゃあ今日も、異界と地上のために! ひまわり市、広報全力でいきます!」




