表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界に浮かぶ町、ひまわり市 ー転移した山奥のまち、異世界対応中!ー  作者: ひまわり あおい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

171/862

第171話「異界植物園、歩くサボテンの大脱走!」

 ――ひまわり市・異界植物園。


 季節展示の「サボテン・スピリット展」が開催され、朝から来園者でにぎわっていた。

 大小さまざまなサボテンが並び、中には魔力を帯びて光るものや、リズムを刻むように揺れるものまである。


 勇輝と美月は、市役所の“異界観光・安全対策チーム”として巡回に来ていた。


「主任……サボテンが揺れてるのって、仕様ですか?」


「展示担当いわく“元気な証拠”らしい」


「植物の“元気”ってあんな動きします!? もう踊ってますよ!」


 美月がツッコミを入れたその時、

 温室の奥から係員が泣きそうな顔で駆けてきた。


「す、すみません! 一番奥に展示していた“サボテン・ウォーカー”が……その……」


 勇輝は嫌な予感しかしない。


「まさか、歩いたのか?」


「歩いて……逃げました……!」


「やっぱりいいいいい!!」

 美月の叫びが温室内に響いた。


【温室内・捜索開始】


 増殖するケーキよりはマシ……なはずなのに、温室内はすでにざわついていた。


「サボテンが足音立てて走るって、どういう構造なんですか!」


「知らん。だが刺さると痛いのは確実だ」


「それだけは絶対避けたいです!!」


 来園者の声も混乱気味だ。


「さっきトゲが横切ったぞ!」

「いや、あれは尻尾じゃ……サボテンに尻尾があるのか?」

「えっ、ちょっと! 子どもが触りに行っちゃダメーっ!」


 勇輝は無線を取り、対策を指示した。


「美月、逃げた方向の封鎖だ。サボテン・ウォーカーは小型だが脚が速い。追い込むぞ」


「脚が速いサボテンってなんですか!? 絶対説明不足ですよあの展示!」


 係員が小さく手を挙げる。


「あの……“好奇心旺盛でよく動く”と説明書には……」


「もっと大きく書いとけええええ!!」

 美月のツッコミが温室に響く。


【逃走サボテン・発見】


 温室裏の小道で、ようやくサボテン・ウォーカーを見つけた。

 丸い胴体に小さな足がちょこちょこ動き、なぜか得意げに揺れている。


「……かわいい顔して逃げ足速いな」


「主任! 逃げますよ!」


 美月が飛びつこうとした瞬間、

 サボテンが ぼふっ と体を震わせ、細かい魔力のトゲをまき散らした。


「ひゃああああ!! なんで防御機能付き!?」


「安全展示じゃなかったのか?」


 係員は泣きそうだ。


「“まれに興奮すると飛ばす”と説明書には……」


「だから大事なところを大きく書いてえええ!!」


【確保作戦】


 勇輝は冷静に状況を整理した。


「美月。あれは風魔力で動いている。興奮を抑えれば静止するはずだ」


「興奮を抑える……どうやって!?」


「湿度だ。霧吹きで空気を重くする」


 美月は一瞬固まり、そして叫んだ。


「えっ!? サボテンに霧吹きって逆じゃないですか!? 怒りません!?」


「怒るだろうが、湿度で動きは鈍るはずだ」


「理屈はわかるけどもーーー!!」


 結局、美月が霧吹きを構え、勇輝がサボテンの逃走経路を塞ぐ形で配置した。


「よし……今!」

 美月が霧を浴びせる。


 サボテン・ウォーカーは ぴたっ と動きを止め、

 次の瞬間――しょん、としぼんだ。


「……止まりました」


「よし、確保するぞ」


 ふたりはそっと籠に入れ、温室の奥へと戻っていった。


【温室・安全復帰】


 係員たちは安堵し、来園者は事態を知らないふりで記念写真を撮り続けていた。


 美月はぐったりしながら言う。


「……今日も災害級でしたね……」


「災害ではない。植物の“散歩”だ」


「散歩の範囲越えてますよ!!」


 そこへ、市長がのんびり到着した。


「おお、勇輝。植物園で何かあったのかね?」


 美月が涙目で答える。


「サボテンが……歩いて……大脱走しました……」


 市長は穏やかにうなずいた。


「ふむ。来年から“歩行禁止”と協定に明記しておこう」


「当たり前のことを協定にしないでくださいーーー!!」


 温室には、美月の悲鳴と、揺れるサボテンたちの陽気な振動だけが残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ