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異界に浮かぶ町、ひまわり市 ー転移した山奥のまち、異世界対応中!ー  作者: ひまわり あおい


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第127話「異界フリーマーケット開催指導」

 フリーマーケット――それは、町の賑わいだ。

 不用品が誰かの宝物になる。地域の交流になる。

 そして、役所にとっては――許可と安全と苦情の塊になる。


 ひまわり市が異界に転移してからは、そこに“異界要素”が加わった。


「主任……フリマが、勝手に始まりました」

 商工観光の職員が、開口一番で言った。


「勝手に始まるフリマはフリマじゃない、災害だ」

「場所は中央公園です」

「一番ダメな場所じゃねぇか!」


 美月が目を輝かせる。


「イベント回! でも行政案件!」

「喜ぶな! 止めるな! 整えるんだ!」


 加奈が心配そうに言う。


「誰が始めたの?」

「“異界フリーマーケット同盟”と名乗る人たちです」

「同盟が軽いな! でも嫌な予感しかしない!」


 市長が通りかかり、さらっと言った。


「賑わいは正義だ」

「正義を勝手に発生させるな!」


 中央公園に着くと、もう“町”ができていた。

 シートが敷かれ、屋台が並び、人が行き交う。

 スライムがぷるぷる商品を運び、

 エルフが木の台を置き、

 ドワーフが鍛冶台を出し、

 魔族が黒いテントを張っている。


「全部盛り!!」


 そして入口には、手書きの看板。


『異界フリーマーケット

 参加自由/開催自由/責任は空へ』


「責任を空に捨てるなぁぁ!!」


 勇輝は深呼吸した。

 ここで“中止”を叫ぶと反発が爆発する。

 人が集まっている時点で、もう“現実”だ。


 だから行政の基本に戻る。


「止めるより先に、事故を止める。

 そしてルールを付ける」


 まず危険箇所を見た。

 見た瞬間、胃が縮んだ。


火器(ドワーフの鍛冶台)


火器(魔族の黒テント内で香を焚いてる)


火器(焼き串屋台っぽいもの)


人混みの中に“召喚陣”のチョーク絵


ドラゴンが荷物を降ろす予定(空輸)


「火器多すぎ!!

 そして召喚陣、やめろ!!

 ドラゴン、来るな!!」


 加奈が、子どもたちを端に誘導する。


「危ないから、こっちで見ようね」

「加奈、助かる!」


 美月がスマホを構える。


「課長、ライブ配信――」

「するな!! 事故ったら永久に残る!」


 勇輝は、現場の中心に立ち、声を張った。


「ひまわり市役所です!

 フリマ自体は否定しません。

 でも――安全ルールは今ここで入れます!」


 ざわざわする。

 反発の空気もある。

 だが、事故が起きれば全員が損する。

 そこは伝わる。


 魔族テントの代表が言った。


「勝手に始めたのに、口を出すのか」

「口を出す。

 ここは公共の場所で、事故が起きたら町が止まる」


 ドワーフが腕を組む。


「ルールは嫌いじゃない。

 数値で言え」

「よし、数値で言う」


 エルフが静かに言う。


「賑わいは森の祭りに似る。

 だが森にも火の掟がある」

「助かる、その流れで協力して」


 スライムがぷるんと前へ出る。


『ぷる(るーる?)』

「ルール。君が迷子にならないためのやつだ」


 勇輝は、白紙の紙に太字で書き、掲示板に貼った。

 “今日から”の暫定ルールだ。


異界フリマ:当日ルール(暫定)


火器は指定区画のみ(消火水・見張り必須)


通路は2m確保(露店ははみ出さない)


召喚陣・呪具の使用禁止(事故防止)


子どもスペースと迷子対応(迷子センター連携)


ドラゴン空輸は禁止(荷下ろしは河川敷へ)


「禁止って言った! 珍しく禁止って言った!」

「命がかかってるからだ!」


 ドワーフが頷く。


「通路2m、良い。車輪が通る」

 魔族代表が不満げに言う。


「香を焚けぬのか」

「焚いていい。

 ただし火器区画で、消火用意して、風向き考えて」

「……条件なら受ける」


 エルフが言う。


「召喚陣禁止は、残念だが理解する」

「残念って言うな!」


 スライムがぷるんと頷く。


『ぷる(みち、ひろい)』

「そう、道は広く!」


 次は“許可”だ。

 当日ルールだけでは、次回も勝手に始まる。


 勇輝は、運営の代表を集めた。

 名乗りは軽いが、人はいる。


「あなた方、“同盟”の代表は?」

 数人が手を挙げた。

 魔族、ドワーフ、人間、そしてなぜかエルフ。


「よし。次回からは、開催の流れを作る。

 簡単でいい。

 でも、申請は必要だ」


 人間側が言う。


「申請って、めんどくさくないですか」

「めんどくさい。

 でも事故が起きたらもっとめんどくさい」


 加奈が笑って言う。


「“めんどくさい”は、安心の代金だよ」

「加奈の説得力、強い」


 美月が言った。


「じゃあ“フリマ開催ガイド(1枚)”作りましょう!」

「今度は良い! ただし煽るな!」


 その場で決まった“次回から”のルールは、これだ。


異界フリマ開催手順(試行)


代表者を決める(連絡先必須)


開催日の1週間前までに申請(場所・規模・火器)


当日は運営スタッフを配置(通路・迷子・火器)


違反が出たら是正→繰り返すと次回不可


迷子センター・消防と事前連携


「これなら回りそうだ」

 商工観光が言う。


「回す。回さないと次は祭りじゃなく事故だ」


 夕方。

 フリマは“勝手なカオス”から、“ルール付きの賑わい”に変わっていた。

 通路が空き、火器が端に寄り、迷子案内が出た。

 ドラゴン空輸は河川敷へ回った(不満そうだった)。


 市長が満足げに言った。


「賑わいが制度になったな」

「制度にしたのはこっちの胃です!」


 加奈が笑う。


「でも、みんな楽しそうだったね」

「楽しさを守るためのルールだ。

 楽しさの後始末が役所だからな」


 美月が呟く。


「課長……次は“SNS炎上”の匂いがします」

「やめろ、予言するな」


次回予告


異界SNSで炎上が起きた。原因は“美月の訂正”。

訂正が一番拡散する地獄。

「異界SNS炎上案件」――広報、また戦場へ!

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