最終話 心配しなくてもこれからも一生かけて責任を取ってやるよ
この世界に逆行転生してから十年が経過した。俺は前世で死んだ時と同じ二十六歳になっている。高校卒業後の進路をどうするかは結構迷ったが、結局前世と同じ地元の国立大学に進学していた。
一応関東や関西にある難関私立大学にも合格自体はしていたが、やはり入奈と同じ大学に進学したいという思いからその選択を選んだ。
そして大学生になってからは積極的にインターンシップに参加するなど前世以上にガクチカ作りに力を入れ、その結果就職活動は割と満足する結果で終わる事が出来た。
当然今世で入った会社にも色々と厳しさはあったが、前世とは違って長時間残業があったり達成不可能なノルマを課せられるようなブラック企業ではなかったためのびのびと働けている。
「おっと、もうこんな時間か」
パソコンの右下に表示されていた時刻を見た俺は今日の日報を書いて家に帰る準備を始める。今の職場は定時で帰る事も出来るため何日も徹夜をしたり、会社に泊まる必要もない。だから前世のサラリーマン時代よりはるかに健康的だ。
「佐久間さんが定時に帰ろうとするなんて珍しくないですか?」
「ああ、今日は結婚記念日だからな」
「そっか、佐久間さんって愛妻家でしたもんね」
隣の席に座っている後輩社員から理由を聞かれたため答えると納得した表情になった。そう言えば俺が愛妻家である事はこの支店だと皆んな知ってるんだっけ。まあ、あれだけ記念日を大切にしていたら当然か。
「って訳でそろそろ俺は帰るからよろしく」
「はい、お疲れ様でした。また明日」
退勤打刻を押してパソコンの電源を切った俺は会社を出て車に乗り込む。それから寄り道して注文していたケーキを受け取ってから家に帰る。
「ただいま」
「おかえり、待ってたぞ。ちょうど料理が完成したところだ」
「ありがとう、それは楽しみだ」
玄関の扉を開けるとエプロン姿の入奈が出迎えてくれた。今日はわざわざ有給を取って結婚記念日の準備をしてくれたので感謝しかない。俺はジャケットを脱いでハンガーにかけるとダイニングテーブルにつく。
「めちゃくちゃ豪勢だな」
「せっかくの結婚記念日だから結構頑張った」
ダイニングテーブルに置かれていた料理はイタリアンだったがどれもめちゃくちゃ美味しそうだった。前世で同棲したばかりの頃二人で悪戦苦闘していたのがまるで嘘のようだ。お互いに席についたため俺達は料理を食べ始める。
「それにしても俺と入奈が結婚してから四年も経つんだな」
「本当にあっという間だった」
「ああ、前世の期間も合算すれば入奈とは十五年以上一緒にいるけど長いようで短かったよな」
俺が入奈と結婚したのは大学を卒業してすぐだった。学生時代に結婚するという案も一応あったが、お互いに社会人になってからの方が良いという結論になってそうなったのだ。
復縁してから結婚するまでの間やしてからも喧嘩などをする事はたびたびあったりはしたが今日まで上手くやってこれている。あの一件以降、隠し事なども一切せずに本音を言い合っている事が上手くいっている秘訣だ。
「お互いここまで無事にこれて本当に良かったよ」
「そうだな、有翔が過労死する事も私が病気で命の危機になる事もなかったしまさにハッピーエンドだ」
前世では急性骨髄性白血病に罹患して入院していた入奈だったが今世では早期発見できたおかげで悪化する事なく完治する事が出来た。ちなみに早期発見出来なければかなり危険だったらしいので前世の経験が見事に活かされた形だ。
「それより名前の方はどうだ?」
「候補は何個かあるんだけどまだ悩み中なんだよな」
「やはり簡単には決められないよな、私も悩んでいる最中だし」
「まあ、まだ性別もどっちか分かってないしゆっくり考えようぜ」
俺と入奈の最近の会話はこれから生まれてくる子供の名前に関する話題が多い。少し前に妊娠が発覚してすぐは二人して舞い上がっていたが、準備したり考えたりしなければならない事も多いため色々と大変だ。
「生まれてくる子供が女の子だったらちょっと怖いな、私の有翔を取られるかもしれない」
「入奈って相変わらず劇重だよな」
「私をこういう体にしたのは有翔だって事を忘れたとは言わさせないぞ」
「だからちゃんと責任を取ってちゃんと結婚しただろ」
「私と結婚するのは当然だ」
「心配しなくてもこれからも一生かけて責任を取ってやるよ」
もはや入奈は俺の人生に無くてはならない存在と言っても過言ではない。俺達の人生はまだまだ続くがもう離れ離れになる事はないだろう。だってもうお互いに離す気がないのだから。
【読者の皆様へ】
これにて本作は完結となります、ここまでお読み頂いてありがとうございました!!
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なお、同名で連載中のカクヨム版は第7章の次はエピローグではなく第8章に続く形となります。
第7章までが付き合うまでの話であり、第8章以降は付き合ってからの話となります。
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