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第4話 正確にはいたという過去形になるがな

「それでこれからどこに行くんですか?」


「隣町にあるショッピングモールで考えてるんだがどうだろうか?」


「分かりました、それで大丈夫ですよ」


 わざわざ隣町まで行かなくても駅前にあるショッピングモールで良くないかと一瞬思った俺だったが、よくよく考えたらあそこは再開発前の現在はまだ存在すらしていない。

 未来の記憶があるとこういうトラップに引っ掛かりそうになるため注意が必要だ。ひとまず行き先が決まったため俺と入奈とともに学校を出る。


「そう言えばそろそろ復習テストの結果が出揃ったころだと思うが有翔の結果はどんな感じだ?」


「春休みに遊び過ぎたせいで暗記科目がボロボロでした、それ以外は問題なかったですけど」


「確かに暗記科目は気を抜くと一気に忘れるよな」


「二年生も課題テストがあったって聞きましたけど氷室先輩はどうなんです?」


「私は英語以外は割と高得点だった」


「なるほど、氷室先輩は英語が苦手なんですね」


 そう言えば入奈は前世でも英語が大の苦手だったな。俺と入奈の母校である大学はそこそこ高いレベルであり、英語はセンター試験でも二次試験でも必須だったはずなので彼女がどうやって合格したのかよく謎に思っていた記憶がある。


「だから英語以外であれば私が教えられるぞ」


「また機会があればその時はよろしくお願いします」


 入奈とは積極的に関わるつもりはないが一応社交辞令でそう言っておいた。それからしばらくして駅に到着した俺達は電車で移動し始める。

 東京や大阪などの大都会とは違って本数が少ないためタイミングよく来た電車に乗れたのはラッキーだった。そしてブラックサラリーマン時代は基本的に始発か終電でしか電車に乗っていなかったため明るい時間に乗るなんて久々だ。


「ちなみに氷室先輩の従兄弟って今何歳なんですか?」


「次の誕生日で二十二……いや、十二歳だったはずだ」


「じゃあ今は小学六年生なんですね」


「そうなんだよ、来年からは中学生になるわけだし何をあげれば喜ぶかが分からないから困っててな」


 最初に二十二歳と言いかけて十二歳に言い直したところに違和感を覚えたが多分他の誰かと間違えたのだろう。それにしても十二歳か。

 中身がアラサーの俺からすればめちゃくちゃ若く感じる。俺が十二歳の頃は何を欲しがってたんだろ。小学六年生の頃なんて十五年近く前のため全く思い出せない。そんな事を思いつつ入奈と二人で話しながら電車で揺られているうちに隣町の駅に到着した。


「相変わらずここの噴水広場は皆んなの待ち合わせスポットだな」


「そうですね、ここなら遠くからでも目立つので集合場所としては分かりやすいですし」


 噴水の周りには制服を着た学生からスーツ姿の大人まで幅広い層の人々が集まっている。ちなみに噴水は未来でも取り壊される事なくそのままだったため俺も大学生の頃に待ち合わせ場所として使っていたっけ。

 ちなみに入奈とのデートの待ち合わせ場所としてもよく使っていたためここは俺達にとっては思い出の場所と言えるだろう。もっとも今世の俺と入奈にとっては思い出のかけらすらないが。


「私も彼氏とよくここで待ち合わせをしてたぞ」


「えっ、氷室先輩って彼氏いるんですか!?」


「正確には()()という過去形になるがな」


 入奈は俺と付き合うまで何も経験が無かったため、てっきり俺の前に彼氏なんていないと思っていたがそうではなかったらしい。

 まさかの事実が発覚したため驚きだ。そして俺は不覚にも顔も知らない誰かに嫉妬してしまった。やはり俺は関わらないようにしているにも関わらず入奈にまだ未練があるらしい。

 やはりそう簡単には忘れる事が出来ないようだ。だが前世で入奈から別れる際に言われた言葉がどうしても頭をよぎってしまう。

 付き合った結果お互いが不幸になってしまう未来が待っているのであれば初めから付き合わない方が良いだろう。入奈の事を綺麗さっぱり忘れるためにも早く新しい彼女を作って未練を断ち切るべきだと思う。

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