表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偏愛霊  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/93

第6話 前途多難

 俺は思考停止する。

 異様な光景を前に理解が追い付かなかったのだ。

 いや、本当はただ考えたくなかっただけなのかもしれない。

 とにかく頭が真っ白になっていた。


「な、なんだあれ……」


 よろめくスーツの女が涙を流す。

 身体に巻き付いた黒い髪が一気に締まり、彼女は苦しそうな声を上げた。

 涙を流す目が俺を見ている。


「たすけ、て」


 次の瞬間、女の首が回転して真後ろを向いた。

 手足も滅茶苦茶な角度にねじれて血を噴き出す。

 軋む人体が髪の毛の締め付けによって破壊されていく。

 ものの数秒で女はバスケットボールくらいのグロテスクな球体になってしまった。


 球体に絡み付いた髪の毛が模様のようになっている。

 よく見ると模様の隙間に人間の顔がある。

 それはスーツの女ではない。

 目を見開いて俺を凝視するのは美夜子だった。


(嘘……だろ。そんな、ありえない。人が死ぬなんて)


 肉の球体から髪が拡散した。

 四方八方に伸びた髪は乗客を次々と捕まえて首吊り状態にする。

 捕まった乗客達は首に巻き付いた髪を必死に引っ掻くも決して剥がれることはない。

 彼らは恐ろしい形相で死んでいく。


 自分にも髪が迫ってくるのを見た俺は、叫びながら逃げ出した。

 全力疾走で後方車両へと向かう。


「うわあああああっ」


 すぐ後ろまで髪が来た気がするが捕まらなかった。

 振り返って確認する余裕はない。

 必至に走る俺はスマホで棺崎に電話をかける。

 数コール後、なぜか楽しそうな棺崎の声が聞こえてきた。


『どうしたんだね、村木君。まさかもう襲撃されたのか』


「そのまさかですよっ!」


 暢気な棺崎に怒鳴りつつ、ドアをスライドさせて隣の車両に移る。

 その直後、閉じたドアに束が激突する。

 あと少し遅れていたら捕まるところだった。

 その事実にぞっとする。


 隣の車両はパニックに陥っていた。

 俺と同じく逃げてきた者と、状況が分からず混乱する者が入り乱れている。

 誰かが非常ボタンを押して乗務員と通話しているが、説明に難儀しているようだ。

 そもそも乗務員が来たところで心霊現象を解決できるとは思えない。


 俺は勢いをつけて人混みの中へ飛び込む。

 他人を巻き添えにして少しでも狙われるリスクを減らすためだ。

 クズと罵られても仕方のない行為だが、良心に従って行動していては死ぬ。

 これくらいの覚悟は必要だろう。


 押し合って窒息しそうな状況の中、枝分かれした髪が天井を埋め尽くす。

 照明が割れて暗闇に包まれる車内。

 頭上から襲いかかる美夜子の髪が乗客を絞殺していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ひぅっ!
[気になる点] >ものの数秒で女は(以下自粛)  ヒエッ……。  しかしここまで激しく人体を損壊させる怨霊はどんな経緯でこんなパワーを得たのやら。  この怨霊が無関係の人間を無差別に巻き添えにして…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ