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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第47話 祟りの土地

「須王会……それって、俺達に攻撃してきた例のヤクザですよね。そんな場所に行くんですか」


「ええ、正確には須王会の元会長が暮らすビルですが」


 赤信号で停車したタイミングで、安藤がクリアファイルに入れた資料を渡してきた。

 そこには彼の調査したであろう須王会の情報がびっしりと記載されている。

 一枚目には立派なオフィスビルの写真があった。


「ビルが建つ前は慰霊碑がありました。一等地なので様々な企業がビルを建てようとしましたが、そのたびに様々な事故が起きたそうです」


「慰霊碑の呪いってことですかね」


「棺崎さんによると地縛霊の祟りらしいです」


 俺は安藤に促されて資料を読み進める。

 祟りのせいで買い手のない土地を当時の須王会が格安で購入したのだという。

 須王会の土地になった途端、事故は起きずにビルの建設まで漕ぎつけたそうだ。

 そこまで読んだところで、俺は引っかかる点を見つけた。


「慰霊碑を潰してビルを建てたんですよね。それで祟りが無いなら心霊スポットじゃないのでは……?」


『祟りはしっかり起きているよ』


 棺崎の声がした。

 声は安藤のスマホから聞こえてくる。

 いつの間にか通話を繋げていたようだ。


『資料の最後のページを見たまえ。どれだけ凄惨な被害か分かるはずだ』


「えーっと……」


 俺は資料をめくって該当部分を発見する。

 須王会のビルの完成後、周辺で夥しい数の事件や事故が多発していた。

 人が死ぬ交通事故は日常茶飯事で、建物のガス爆発や火災、通り魔や自殺まで起きている。

 資料に載っている分だけで数十件はあるだろう。

 ただの偶然では片付けられない状態だった。


『件のビルの周辺で異様な事件と事故が発生しているのだよ。それでいて須王会は被害を受けず、むしろ順調に繁栄している』


「ビルの建設された年と須王会が急成長した時期が一致しました。おそらく偶然ではないのでしょう」


 安藤の補足を聞いた俺は背筋が冷たくなる。

 自分でも否定したい予想を閃いたのだ。

 俺は恐る恐るその予想を口にする。


「まさか……慰霊碑の祟りを周囲に押し付けている?」


『ご名答。心霊に関する理解が深まってきたようだね。特別に百ポイントあげよう』


「ポイントをためると何かあるんですか」


『何もないよ』


「ですよね」


 俺はため息を洩らす。

 こんな時でも棺崎の冗談は止まらない。

 不謹慎だと思ったが、言っても無駄なので黙っておく。


『須王会の本部……通称"祟りビル"は周辺一帯を巻き込む危険な心霊スポットだ。被害規模を考えると新村美夜子さんとも張り合えるだろう』


「市民の安全のためにも早期解決が望ましいです」


 安藤は淡々と述べる。

 そこに義憤や使命感らしき感情は見られなかったが、彼がやる気なのは伝わってきた。

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