第41話 新たな問題
「吸収……? えっ、いや、それってどういうことなんですか?」
「そのままの意味さ。喰呪霊は新村美夜子さんの一部になった。簡単に言えばパワーアップしたわけだね」
棺崎はとんでもない説明をする。
嘘だと信じたいが、たぶん本当なのだろう。
美夜子の力にあの厄介な黒い手が加わったとすれば、もう誰も勝てないのではないか。
俺が露天風呂で見た繭は吸収後の姿だったのだろう。
あまりにも悪い知らせである。
事態は好転どころか間違いなく悪化していた。
俺は走行中なのも構わず棺崎に詰め寄って責める。
「美夜子の力を削ぐためにここまで来たんですよね。逆効果じゃないですか!」
「私も予想外だったのだよ。こんな現象は滅多に起きない。互いに共鳴する要素があったのだろう。心当たりはないかね」
「いえ……何も」
俺は勢いを失って黙り込む。
冷静に応じる棺崎を見て怒りや焦りが鎮まってきた。
どうせここで慌てたり、棺崎に八つ当たりしても意味はない。
誰もそんな結果を予想できるはずがなかった。
少し気持ちを切り替えた俺は、ふと閃いて訊く。
「あっ、そうだ! 喰呪霊が混ざったことで、もう俺を狙わないとかありますかね」
「絶対にない。吸収してもベースは新村美夜子さんのままだ。今後も変わらず襲撃を受けるだろう」
そう都合の良いことは起こらない。
現実はどこまでも非情なのだ。
とりあえず受け入れるしかなかった。
俺は運転中の佐奈に声をかける。
「怪我はしてないか」
「こっちは無傷よ。それより自分の心配をしたら?」
「え?」
指摘されて初めて気付く。
手足に紫色の痣がいくつも浮かんでいた。
服をめくると同じような痣が広がっている。
触れても特に痛みはないが、絶えず濃淡や形状が流動している。
俺は痣を強く擦ってみる。
薄れたりすることはなく、やはり流動を繰り返すだけだった。
自分の身体の異変を目にした俺は動揺する。
「うわ、何だこれ!」
「君は喰呪霊の攻撃で全身に呪いを負ったのだ。このままだと死ぬよ」
「はぁ!? どうにかできないんですか!」
「解決法はある」
「お願いです、教えてください!」
俺は泣きそうになりながら頼み込む。
棺崎は愉快そうに微笑んだ。
「心霊系に強い闇医者を紹介しよう」
「や、闇医者……」
自分の顔が引き攣るのを自覚する。
嫌な予感しかしない。
だが、他に選択肢はないのだろう。




