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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第34話 管理人

 数時間後、特に何事もなく二つ目の心霊スポットに到着した。

 ドアを開けた瞬間、強烈な硫黄臭が鼻に飛び込んでくる。

 思わず服の袖で覆ってしまった。

 目を開けているのも少し辛い。

 これはじきに慣れるものなのだろうか。


 少し心配になりつつ、俺は後部座席の段ボールを下ろしていく。

 ひとまず使えそうな物を選んで残りは車内に残す予定だ。

 棺崎が呪具の選別を行う中、俺は前方の景色を見る。


 辺り一帯を覆う靄の先に廃旅館があった。

 無茶な増築を繰り返したのか、あちこちが出っ張った歪な外観をしている。

 老朽化も影響もあるのか全体的に黒ずんでおり、不気味な雰囲気を醸し出している。

 どんよりとした曇り空がその印象に拍車をかけていた。


(この感じは……ヤバいな)


 俺は息を呑んで固まる。

 自殺神社の時と同じ恐怖が這い上がってきた。

 目が異様に乾いて肌がぴりぴりとする。

 あそこに霊がいることがはっきりと分かる。

 じっと廃旅館を観察していると、棺崎が面白そうに話しかけてきた。


「おや、君の霊感も冴えてきたようだね」


「それって良いことなんですか?」


「半端な霊感は霊から狙われやすくなるよ」


「最悪だ……」


 俺がうんざりした顔になる横で、佐奈が勝手に盛り上がっていた。

 たぶん霊感というワードに惹かれたのだろう。

 彼女は棺崎に詰め寄って質問する。


「あの! 霊感ってあたしでも習得できますか!」


「このまま同行すれば嫌でも身に付くだろう。漫画のために霊感が欲しいのかな」


「はい、そうです! 目標は棺崎先生みたいな霊能力者になることですっ!」


「良い心がけじゃないか。村木君も見習いたまえ」


「はあ……」


 いつの間にか先生呼びになっている。

 かなり仲良くなっているし、俺はすっかり蚊帳の外だった。

 選別が完了した呪具を渡されつつ、俺は心の中で愚痴る。


(一応、俺の問題のはずなのになぁ……)


 その時、廃旅館より手前にある家屋から人影が現れた。

 こちらに歩いてくるのは、着流しを纏う長身の男だった。

 どこか頼りなさげな微笑は、風が吹けば飛んでいきそうなほど弱々しい。

 ただし、目だけは奇妙な迫力を宿している。

 男は少し離れたところで止まって話しかけてきた。


「こんにちは。あの廃旅館……"喰呪荘"にご用ですか」


「ああ、厄介なモノを抱えているものでね」


 棺崎が答えると、男が露骨に顔を顰める。

 彼は用心深い様子で言う。


「……申し訳ありませんが、それ以上こちらに近付かないでください。できればもう少し離れてくださると助かります」


「ああ、すまないね。配慮不足だった」


 棺崎が下がったので俺と佐奈もそれに倣う。

 男の言葉の意味はすぐに理解できた。


(俺が美夜子に憑かれているからか)


 二メートルほど下がった佐奈が挙手をした。

 彼女は大声で男に問う。


「あなたは誰でしょうか! もしかして幽霊ですか?」


「ははは、違いますよ。私はこの地を管理する丑宮です」


「心霊スポットを管理……つまり丑宮さんは霊能力者でしょうか」


「ええ、微力ながら霊を知覚することができます。そちらの方に比べれば、常人に毛が生えた程度ですがね」


 丑宮が意味深な目つきになる。

 その先に立つ棺崎は、ドヤ顔でピースサインを作った。

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