第31話 暴露
強烈な痛みが脳天まで突き抜けた。
俺はその場に崩れ落ちてのたうち回る。
股間のダメージは甚大だった。
「うごおおおおおお……」
「騒がないで。近所迷惑でしょ」
佐奈が俺の腕を引っ張って室内へと入れる。
そのまま無造作に廊下に捨てられた。
床で倒れる俺に対し、佐奈は冷たく言い放つ。
「しばらくそこで反省しといて」
「は、はい……」
命令されずとも股間の激痛で動けない。
あいつ、遠慮なく蹴りやがった。
もし潰れたらどうするんだ。
怒鳴りつけてやりたいが、金を借りるために来たことを思い出して気持ちを鎮める。
ここはクールに行こう。
目的のために本音を隠すのだ。
美夜子の霊に殺されることと比べれば、こんな仕打ちなんて可愛いものだろう。
じっと身体を丸めていると、リビングから棺崎と佐奈の会話が聞こえてきた。
「はじめまして、飯島と申します。漫画家をやっています」
「私は霊能探偵の棺崎だ。よろしく。村木君とはどういう関係かな?」
「あー、セフレです。きっかけはマッチングアプリでした。無駄にセックスが上手いんでキープしてます」
佐奈はあっさりと打ち明けている。
基本的にこういう女なのだ。
恥とか外聞という概念を捨て去った性格なので、初対面の人間にもプライベートなことを喋ってしまう。
誰に何と思われようと気にしない強靭なメンタルの持ち主であった。
正直すぎて嘘をつかない性分なのは数少ない長所と言えよう。
俺が呆れている間にも、佐奈は饒舌にカミングアウトしていく。
「知ってます? 村木って清々しいほどのクズなんですよ。漫画家としては資料になるんで助かるんですけどね。マジでヤバいです。この前なんて彼女が――」
「もう悪口はいいだろ。本題に入ろう」
俺が割り込んで発言すると、佐奈は不満そうにしつつも尋ねてきた。
「あんたはクズだけど、金遣いは荒くない。どこで借金をしたら、最低三百万なんて寝言を言い出すの?」
「ええと、実は……」
俺はこれまでの経緯をまとめて説明する。
だいたい伝え終えた頃には、佐奈は大いに興奮していた。
彼女は俺の胸ぐらを掴み、激しく揺さぶりながら目を輝かせる。
「すごいじゃん! 霊能探偵って自己紹介された時点で予感はしてたけど、こんなの最高のネタになるでしょッ!」
佐奈はブツブツと呟いて自分の世界に没頭する。
それを見た棺崎は首を傾げた。
「彼女はどうして昂っているのだね」
「へ、変人なんですよ……漫画のためなら何でもするような奴で……」
揺さぶられたまま俺は答える。
そろそろ首が痛いが、佐奈の興奮はしばらく止まらない。
途中で邪魔するとまた股間を蹴られかねないので、俺は無防備に揺さぶられ続けることを選んだ。




