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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第21話 無償の善意

 その後、俺達は安藤の車でサービスエリアを出発した。

 目的地は一つ目の心霊スポット――タクシーの本来の行き先である。

 もし事故が起きていなければとっくに到着していただろう。


 俺と棺崎は後部座席に座り、安藤がずっと運転している。

 基本的に無言の安藤は煙草を吸っていた。

 煙は外に吐き出しているのでこちらに流れてくることはない。

 これから心霊スポットに向かうというのに動揺は皆無であった。


 車内には四枚一組の結界の札を貼っている。

 札の効果が発揮される間は、美夜子は車に入ってこれない。

 ちなみにこれは棺崎のアイデアだが、彼女はタクシーに乗った段階で思い付いていたらしい。

 俺が「もっと早く教えてほしかった」と文句を言うと「教える義務はない」と返されてしまった。

 アドバイスが欲しければ、積極的に質問するしかなさそうだ。


 高速道路を下りてからも特に事故は起きなかった。

 周囲を走る車にも異変はない。

 日没を迎えた街はどこもかしこも薄暗かった。

 かなり田舎まで来たので余計にそう感じた。


 闇を注視していると美夜子が現れそうなので、俺は安藤との会話で気を紛らわせることにする。


「あの……どうして協力してくれるんですか」


「お二人の話が本当なら、新村さんの霊は放っておけませんからね。早期解決が望ましいでしょう」


 安藤は前を向いたまま答える。

 彼の表情はやはり冷ややかだった。


「本来ならもっと人員を増やしたいのですが、霊を信じる人間は少ないです。事情を伝えてもまともに取り合ってもらえません。だから助力できるのは僕だけです。すみません」


「いえ、安藤さんが手伝ってくれるだけでもありがたいですよ。すごく頼もしいです」


 最初は怪しいと思ったが、単に感情表現が苦手なのかもしれない。

 ここまでの安藤の印象はクールなお人好しだった。

 善意だけで無償でここまで力を貸してくれるのだから感謝しかなかった。


 一方で棺崎がじっと観察していた。

 その視線の鋭さが気になり、俺は棺崎に小声で告げる。


「失礼は態度はやめてくださいよ。せっかく助けてくれたんですから」


「助けてくれた……か。君はそう解釈したのだね」


「どういう意味です?」


「なんでもないよ」


 棺崎は意味深にはぐらかすだけで何も言わなかった。

 それから三十分もかからないうちに、カーナビが目的に到着したことを知らせた。

 車が停まったのは田園地帯の只中だった。

 街灯がほとんどなく、あちこちでカエルの大合唱が起きている。


 車を降りた棺崎は軽快に歩き始めた。


「最初の心霊スポットはこの先にあるよ」


「そろそろどういった場所なのか教えてもらえますか。対策を考えたいです」


 車のエンジンを切った安藤が主張する。

 棺崎は少し考えたから微笑んだ。


「そうだね。歩きながら説明をしよう」


 棺崎が足元をスマホのライトで照らす。

 そこにあったのは血を吐いたカラスの死骸だった。


「我々が向かうのは自殺神社だ。近づくほどに自殺衝動が増すから注意したまえ」

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