第17話 作戦会議
料金所で発生した未曾有の大事故により、高速道路は封鎖された。
俺達は他の人々と共に近くのサービスエリアに移動した。
現場があまりに混乱しているため、一時的に避難したのである。
怪我人は救急車で運ばれ、あちこちで警官が聞き取り調査を行っていた。
そんな中、俺達は食堂の一角を陣取っている。
棺崎はお土産用の饅頭を頬張っていた。
「いやはや、新村美夜子さんは強かったね。また派手にやってくれたものだ」
「笑ってる場合じゃないんですよ」
「愉快じゃないか。ここまで大々的な霊害事件も珍しい。隠蔽工作を任せられた人間は苦労している頃だろう」
棺崎は楽しそうに微笑んでいる。
霊能探偵の彼女にとって、こういう事態は日常なのだろうか。
かなり場数を踏んでいるように見える。
俺が知らないだけで、全国各地で霊による事件や事故が起きているのかもしれない。
「新村美夜子さんは、君が死体に辿り着くことを拒絶しているね。出発したばかりでこれだから先が思いやられるよ」
「どうにかならないんですか。こっちは金を払ったのに死にかけたんですよ。早く美夜子を殺してください!」
思ったより大きな声が出たことで、周囲の人々が注目する。
内容が内容だけに不審そうな視線だった。
気まずくなった俺は床を見つめて黙り込む。
一方、棺崎は平然と喋り続ける。
「新村美夜子さんは厄介な悪霊だね。霊能力者に祓われるリスクを考えたのか、私に直接危害を加えなかった。本能だけで動いているわけではないようだ」
「危害を加えなかった……って、一緒に死にかけましたよね」
「さっきのは間接的な攻撃だった。地下鉄で乗客にやったように、髪で私を絞めなかったろう。向こうも警戒している証拠さ」
棺崎の解説に興味はなかった。
俺は彼女の手から饅頭を奪って問い詰める。
「はっきり答えてください。あなたでは美夜子を倒せないんですか?」
「不可能ではないよ。ただ、無策で挑むと君の依頼を満足に果たせないかもしれない。やはり襲撃を跳ね除けながら移動し、死体を燃やすのがベストだね」
「それがヤバいから話し合ってるんですって。もっと安全な方法でいきましょう」
「霊と関わった時点で安全なんて存在しないよ。楽になりたいなら速やかに自殺するといい」
そう答えた棺崎の顔は真剣そのものだった。
彼女は俺の手から饅頭を取り戻すと、優雅な表情で完食した。