プロローグ
新しい連載になります!
テンション高めなラブコメになる予定…です!※更新不定期
よろしくお願いいたします。
ジュアリス王国の最西端、「魔の森」と呼ばれる場所を、一人の青年が駆け抜けている。
彼は全身傷だらけで、手に持っている剣はかろうじて形を保っているものの、刃が乱れていて、武器としての力を失っている。
青年は汗がにじむ顔をゆがませながら、必死で走り続けた。
「くそっ…なんで急にあんな大型の魔獣が…!」
彼は今日、国の使いで訪れた隣国から戻る途中であった。
本来であれば道中でこんな危険な森を経由するつもりなどなかったのだが、使用するはずだった安全な道が、崖崩れで封鎖されてしまったのだ。どうしても急いで帰らなければならなかった彼は、苦渋の想いで「魔の森」に足を踏み入れた。…が、すぐに後悔することとなる。
森に入ってすぐ、滅多に見ないような大型の魔獣と遭遇してしまったのだ。
何とか応戦したものの、馬を失った。命からがら逃げだしての今である。
後ろから先ほどの魔獣が追いかけてきているのを嫌でも感じてしまう。
その圧倒的な気配にひるんだのがよくなかった。青年はぬかるみに足を取られて転倒してしまったのだ。
「しまった…!」
魔獣の気配が近づいてくるのが分かる。青年はボロボロの剣に手を伸ばし、覚悟を決めて振り返った。
そのとき、辺りに場違いな明るい声が響いた。
「ディアモンテ様~!お願いしますっ!」
すると、突然、辺りを白い光が包んだ。その明るさに思わず目を閉じた青年が、再び目を開けると…
――――――――そこには、美しい少女がいた。
ラベンダー色の長く美しい髪をなびかせた少女は、傭兵のような装いであってもなお、神々しいまでに光り輝いている。髪の同じ色の瞳をすっと細めて魔獣を見ると、少女は静かに呟いた。
「…ふむ。いくら魔の森とはいえ、滅多に見ない大きさの魔獣だな…。確かに、ルルにはまだ難しいかもしれない」
顔に似合わない古臭い口調に青年が目を開いたのも束の間、少女は手に持っていた美しい白銀の剣を振り上げた。
―――――バシュッ!
青年には何が起きたのかわからなかった。気づいたときには、魔獣は悲鳴を上げる間もなく絶命して倒れており、美しい少女は返り血を浴びていた。
「なっ…!?」
青年が驚きの声をあげると、血にまみれてもなお美しい少女は、ゆっくり振り返った。
「…そこの男、実力に見合わない勇気は、愚かだ。この森はお前にはまだ早い。すぐに立ち去るといい」
「…!」
青年が恥ずかしさや悔しさで顔をゆがませると、少女は「まあ…」と続ける。
「…最後は逃げずに剣を持って立ち向かったことは、騎士としては立派かもしれないがな」
ふっと笑った少女に、青年は驚いたように目を見開いて、固まった。
「…では、失礼する」
そう言って素早く立ち去ってしまった少女の姿を、青年はいつまでも見つめていた。
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