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優希の大冒険  作者: にこまる
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山神様の通り道4

「ソイヤ!」


蓮に向かって飛んできた石が、盾で進行方向を変化させられ近くに落ちる。何十回と楯で石を回避し続けたことで蓮は完璧にデッドストーンを攻略していた。一息ついたところで前方を見ると、ゴール目前にある山神様の通り道を捉えた。


それは今回のゴール地点を中心として出来た外輪山の一部が欠けて通れるようになっている道のことだ。距離は二百メートル、幅は三十メートルほどありゴール地点に向かうにはこの道を通るのが近道だ。時間からしても今の俺ではここを通るしかない。


ゴール目前が近いとわかり、足取りも軽く山神様の通り道に足を踏み入れようとしたその時、ゾクッと全身に寒気を感じた。


あいつは絶対何か仕掛けている。


俺は一度後退し、右手にもアースシールドを装備し、念には念を入れて左手の少し破損しているアースシールドも新調した。これでアイツの企みにも対応できるはず。深呼吸をし、覚悟を決めて通り道に足を踏み入れた。


ブブブブブブブブブブ・・・ブブブンッ。


無数の魔法陣が両側の壁一面に出現した。


「あっあっあのアマーーーーー!!」


俺は今さっき装備したばかりのアースシールドを解除して身軽になると、山神の通り道を全身全霊全速前進疾駆した。


「無理だろコレ!!両側から俺目がけて散弾銃ぶっ放してくるようなもんだぞ!」


毒づきながら少しでも生存確率を上げるため、道の中心を走った。山神様の通り道は、幅三十メートルはある大きな道だ。中心を走れば片側の壁からの距離は十五メートル。そのわずかな距離でなんとか狙いを外すため走る。


「うおおおぉぉぉぉーーーー!」


恐怖に心を折られないように気合いを入れる。俺が駆け抜けたすぐ後ろで石が高速で飛び交うのを感じる。何度か石と石とが衝突して飛び散った破片が俺の体を傷つけた。


俺の全身から血が流れ落ちるようになった頃、あと10

メートル先に出口が見えて来た


「あと少し、もうすぐ出口だ」


その時、地面に魔法陣が浮かび上がった。


「ざっっけんな!この魔法はッファーマーフット!ファーマーフット!ファーマーフット!」


予想どおり底なし沼が現れた。魔法陣が出現した段階で底なし沼を予見したため速度の低下は最小限に済んだが、いまの状況ではそれが命取りだ。石は肩やふくらはぎの肉をエグる。


悲鳴を上げそうになるが歯を食いしばり、一歩でも、一歩でも前へと念じ、ドロドロの地面を蹴る。出口まであと数メートルにかかったとき、頭に誰かの声が響いた気がした。


『直撃するぞ』と。


見なくても分かる。一秒にも満たない時間の後、俺の頭はスイカ割りのスイカのようになる。脳みそを撒き散らかせて派手に死ぬのだ。そんなイメージが鮮明に俺の頭に浮かんだ時、俺はとっさにヘッドスライディングをしていた。


「死んでたまるかーーーー!」


そんな未来は受け入れない。断固拒否。俺の強い意思に体が反応したのだろう。

石は尋常ではない風切り音を俺の耳に残しながら反対側の壁に衝突し砕けた。

俺は紙一重で直撃を避けることに成功した。“直撃”は、だ。


石は後頭部をかすめたため意識が飛びそうになる。そのためヘッドスライディングを失敗して顔面を強打したが、今度はその痛みで何とか意識を繋ぐ事が出来た。


もう何が何だかわからない俺に静寂が訪れ、土煙の間から神様が祝福するかのように光が降り注ぐ。俺はゆっくりと立ち上がり光を全身に浴びながら涙した。


俺はやり遂げた。山神様の通り道を攻略したのだ!

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