優希の大冒険 13
元の世界では、フレアは暴れなかった。この世界の人間を殺すことは『人類を救う事を諦めない』という契約に引っかかるからだ。
「さあ、これがこの世界の地図よ。どうやって闇のオーラの適性を持つ者を探すの?当てはあるの?」
優希は自分の中にいるフレアに問いかける
「うん?当てなんかねえよ。それよりこれは何だ?」
フレアは優希の腕を動かし、机の横にあるモニターを指していう。
「ああ、それは監視カメラの映像よ。移っているのはこの建物の入り口よ。ほら、いま人が通ったでしょ。これがあればあっちの世界のように城門に兵士が張り付いて監視する必要がないのよ」
「ふ~ん。コレって沢山あるのか?」
「私が使ってるのはそれだけよ。でも監視カメラ自体はメチャクチャあるわよ。それがどうかしたの?」
「よし、コレでいこう」
「えっ!?まさか監視カメラの映像で適性が分かるの?」
「ああ簡単だぜ。見てろ。いま横切ったコイツ、土のオーラの素質を持っている。コイツは水、コイツは火だな」
「それは一瞬で分かるの?画面に何人まで映って大丈夫?」
「それは自分で確認しろよ。あっちでは暴れさせて貰ったからな。こっちでは協力するって決めてたんだ。契約もあるしな。じゃあ優希、抗うな。俺を受け入れろ」
フレアの言う通りにすると、優希の目に映る監視カメラの映像が変化した。
カメラに映る人の姿が色付いて見えたのだ。
「こっこれは」
優希はすぐ世界最高のコンピューター【さくら】を使用し、世界中のありとあらゆる監視カメラをハッキングし、モニターに次々と映しだした。米粒ほどの大きさの人が画面一杯ぎゅうぎゅうに映っていようとも優希の目には一人一人その者が持つ適性色が見えた
「フレア、闇のオーラの適性を持つ者はどんな色をしているの?」
「そのままだよ。真っ黒だ。頑張って探せよ。俺はお前の処理速度に全然ついてけねえよ。見つけたら教えろよ。俺が判断してやるからよ」
それから優希は睡眠も殆どとらず世界中の監視カメラの映像を見続けた。
一ヶ月もすると、監視カメラのチェックと平行して行っていた【さくら】によるオーラ解析に成功した。それにより【さくら】による土、水、風、火以外の属性を持つ者を探せるようになり、今までより飛躍的に効率が上がったことでちらほらと適性を持つ者を発見することが出来た。
100人程度適性を持つ者を発見したが、フレアは首を横に振るばかりだった。そこそこ適性があるだけでは駄目なのだ。魔王クラスを見つけなければならないのだ。
優希の捜索はさらに一ヶ月経過した。が、結果は変わらなかった。
「どうして!なんでいないのよ!!」
優希は怒りのままに机の上にある物を腕で払いのけ、紅い髪をかき乱して大声で叫ぶ。
「ハァハァハァ・・・・・だめ、だめよ優希・・・落ち着いて・・・発見に時間がかかるのは科学の世界じゃよくあること。気分転換。美味しいご飯でも食べましょ」
優希は今まで学内にあるコンビニでおにぎりを買いこみ、モニターを見ながら食べていた。学生食堂に向かおうとしたが、今日は休日だったことを思い出して舌打ちする。仕方なく優希はスマホで出前をしてくれる店を探す。
「冷たいおにぎりばかりだったから何か暖かい食べ物を・・・あっ近くにお蕎麦屋さんあるじゃない。出前もやってる。ここにしましょ」
優希は待っている間、モニターの監視を続けていた。
『おい優希!モニターなんて見てる場合じゃねえ!いた!桁違いの適性を持つ奴が近くにいる!』