異世界でも優希8
「よく決意したわ蓮!冒険者たるもの魔王軍なんかにビビッてちゃいけないわ。最近は腰抜けが多すぎるのよ。村人達が魔王軍に襲われている場面に遭遇したらチャチャッとぶち殺す位の気合いと強さを持たなくちゃあいけない」
「あっああ、そうだな。それぐらいの意志と強さを持たないと村は取り返せねえよな。指導よろしく頼むぜ」
優希はうんうんと頷いて機嫌が良さそうだ。それとは対照的に受付のお姉さんがイナゴに蓄えていた食料を食べ尽くされたような絶望的な表情を浮かべている。
「ちょっちょっとお待ちください優希様。この方は適正検査もすんでいませんのでお待ちいただけませんか?もし優希様と相性が良ければこちらからご連絡差し上げますので今日はここまでに・・」
受付のお姉さんは平常心を装ってはいるが、精一杯の勇気を振り絞り意見しているように見えた。
「なに言ってるのエリー?聞いてたでしょ?蓮の切実な願いを。蓮は一刻も早く村を取り返したいの。それとも何?私なんかじゃ教官は務まらないとでも?私は冒険者ランキング何位だったっけ?蓮に教えてあげてよ」
「ゆっ優希様は冒険者ランキング3位です。ですが―」
「よし聞いたな蓮!冒険者ランキング3位、まあ3位は私的には不本意だが、超高ランキング冒険者が鍛えてやると言ってるんだ。ラッキー以外の何ものでもない。誤って爆破した建物に賞金首がいて怒られるどころか懸賞金が付いてきた時くらいラッキーだ。蓮の人生に今後このような幸運は訪れないと私は断言出来るだろう。さあ、この契約書にサインするんだ。それが終われば今日から蓮は私の弟子だ」
ちょくちょく出てくるラッキーシリーズが少し具体的なのが恐いが、冒険者ランキング3位の実力者から指導してもらえるチャンスを逃す訳にはいかない。俺はすぐにサインをし、優希の弟子になった。
「よしよし!!さあ、わが弟子よ、魔王軍をぶち殺すぞーー!!」
「ぶち殺すぞーー!!」
優希と俺は拳を掲げて叫んだ。
ただ横でエリーさんがイナゴに身体を囓られたように怯え、頭を抱えて泣いているのがひどく気になった。