風の精霊王ソラ16
「大地の精霊王リク様、それと優希に蓮、申し訳ありませんでした」
「「「「「「「「「「「「申し訳ありませんでした」」」」」」」」」」」」
レイティアを筆頭にドラゴン達が顎を地面につける。人であるなら土下座のような格好をした。いや、間違い無く土下座だろう。
「いや、気にすることはない。我達が無理なお願いをしただけだ。我がこの件でお主達を咎めないことを精霊王の名において約束しよう」
「寛大な処置ありがとうございます」
「ごめんねみんな。協力してもらったのにこんな結果になって」
「優希、あなたが謝ることは何一つありません。逆です。私があなたにお礼を言わなくてはいけないのです。ウィルの本音を聞かせてくれてありがとう。娘を好きなのは分かっていましたが、あんなに奥手では娘を任せられるのかと不安でしたが、ウィルは娘を命懸けで護りに来てくれました。今はそれだけで十分です。蓮、あの子の味方をしてくれてありがとう。きっと嬉しくて嬉しくてたまらなかったはずよ」
「でも結局ウィルの言う通りスパイみたいになっちまって・・・逆に悲しませてるんじゃねえかな」
「そんな事ありませんよ。あの子は超のつく奥手ですがバカではありません。蓮にスパイって言った自分の愚かさを悔いていると思いますよ。またウィルに何事もなかったように会ってあげて。あの子はきっと喜びますから」
「わかった!ありがとうレイティアさん」
レイティアにお礼を言った後、優希を見ると何かブツブツと独り言を言っている。
「優希、しょうがねえじゃん。また機会はあるって!」
「今度!?いつ?いつあるの!!」
優希は血走った目で俺に食いかかってきた。
「よせ優希。ここはひとまず後にするしかなかろう。間に合わぬ時はソラ抜きでやるしかあるまい」
「そっそうね。ごめんね蓮。ひとまずソラの宮殿に帰ろう」
俺が疑問を口に出そうとした時、リクが俺の肩を叩いた。
「今はそれを口にするでない。蓮、お前が軍事拠点を潰した時、必ず話す」
俺はリクの迫力に気圧され何も言えなかった。
それから優希の提案通り、ソラの宮殿に帰ろうとした時、一体のドラゴンが俺達の前に降り立った。
「ご無沙汰しております精霊王リク様。この度は私のためにご尽力して下さり、ありがとうございました。そして優希に蓮もありがとうございました」
俺は一目で分かったウェンディだ。ウィルが惚れるのも分かる。種族が違う俺でさえ何故か心惹かれる。
「おおウェンディ。上手く事が運ばなくてすまなかった」
「とんでもございません。ウィルの心の内が知れただけで私は満足しています」
「そうか。二人の幸せを心から願っておるぞ。ではすまんが我達は急ぐのでな、失礼する」
リクと俺は優希の肩を掴む。
「蓮、しっかり掴まってるか?絶対離すなよ」
「OKだぜ優希・・・ゴメンやっぱり待って!」
俺はウェンディの前まで走って行く。
「ウェンディ。ウィルはさ、メチャクチャ良い奴なんだよ。ガリ箸でウィルの声を聞いてたと思うんだけどさ、実際に本人の口から聞くと、本当にウェンディの事を大事にしてるってことが声からも身体からも伝わってくるんだよ。優希の強さを知って口では引き返したくなっちゃったとか言ってたけどさ、ウィルからはさ、ウェンディを助けられないかもしれない不安や恐怖しか伝わってこなかったよ。普通優希とリクが相手だったら自分の身の心配するだろ。でもウィルは自分が傷つくことや死ぬことなんてどうでも良いと思ってんだ。それってウィルが本当にウェンディの事を愛しててさ、いつもウェンディのためなら死んでもいいと思っていたからだと思うんだ。そんなウィルがさ、ウィルが今・・・泣いてるんだ。ウェンディ、さっき満足しているって言ってたけどさ、満足してこんなとこにいちゃ駄目だ。今はウィルを支えてやるべきだと思うんだ。ウィルは今もどこかで一人泣いているんだから。ウィルは面白い事なんて言えないのかもしれねえ。それどころか多分すぐ話すことが無くなって黙ってしまうと思う。それでもウェンディ・・・そばにいてやってくれ」
ウェンディは終始俺なんかの言葉を真剣に聞いていた。
「ありがとう蓮。蓮は優しいのね。ウィルが親友っていうのも分かるわ」
「俺はあいつに何にもしてやれなかった。俺のやるべき事が終わったら、またソラの宮殿に昇って今度こそ親友らしく一杯遊ぶよ。あっ二人を待たせてるからこれで。それじゃあウェンディまたな!」
「またね蓮」
俺は優希の所まで走って帰ると二人は笑顔で待っていた。
「お待たせ・・どうしたんだ二人共?」
「何でもないわよ。さあ掴まって」