異世界でも優希6
ガイアルに着いた俺はすぐに冒険者ギルドに駆け込んだ。そこに後悔してもしきれない出会いが待っているとも知らずに。
冒険者ギルドに村奪還のクエストを頼み込んだのだが、目安とされる懸賞金の額がとてもじゃないが払えない額だった。それに討伐対象が魔王軍では報復を恐れて誰も引き受けないのではという事だった。
俺より何倍も強い冒険者なら助けて貰える、それで平和な日常が取り戻せると思っていた俺は絶望して固まってしまった。そんな俺を見て可哀想に思った受付のお姉さんが一つの提案をしてくれた。
冒険者ギルドの基本的な仕事はクエストを冒険者がこなしていくことだが、冒険者を育てる仕事もしているらしい。冒険者は命を懸ける危険な仕事だ。なり手も多くはなく、強いモンスターと遭遇すればパーティーが全滅し、一気に4,5人も貴重な冒険者を失ってしまうことも珍しくない。なので冒険者を供給するシステムをギルドが運営しているのだ。
そのシステムは簡単に言うと徒弟制度だ。腕の良い冒険者に師事してレベルを上げていくのだ。教官役の冒険者もギルドから指導料が貰いながら、新人冒険者を自分好みに育成出来るとあり、運営は上手くいっているようだ。俺は一も二もなくその提案に飛びついた。
「それお願いします。早く誰か紹介してください」
「早く紹介したいのは山々だけど、その前に君がどんな適正を持っているか調べた方が良いと思うのよ。魔法に適性がある場合、大抵は戦士職に向かないのよ。そうなると成長スピードがかなり遅くなるわ。」
「じゃあ適正を知りたいんでやり方を教えてください」
「分かったわ。でも適正は簡単に分かるもんじゃな―」
お姉さんの顔が急に麦を食い尽くすイナゴの大群を発見たときのように引きつり、体は小刻みに震えだした。
「少年、教官を探しているんだって?お前はラッキーだ。たまたま拾った剣が聖剣エクステリオンだったくらいラッキーだ。なぜならこの私が教官をしてやろうと名乗りを上げているのだから」
背後から急に声をかけてきた人は女性で髪の長いとびきりの美人だった。その口ぶりから冒険者らし―
「久しぶり蓮」
「あっ久しぶ・・・テメェーーーーーー!!」
俺は両手で女の胸ぐらを掴み、冒険者ギルドに響き渡るほど大きな声で叫んだ。
「お前何してくれてんだ桜宮~~~!!!」
俺の前に現れたのは、この世界に来ることになった原因、桜宮優希だった。