表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Humanity Magi  作者: やばくない奴
マグスバスター
2/71

鉄の霧

 数多の死骸の転がる街を、一台の車が駆け巡る。その道中で何体かのマグスがこちらに攻撃を仕掛けてくるが、反撃の手段はない。御鷹(みたか)は一先ず、この街を出なければならない。しかし幾度となく繰り返されるマグスの攻撃により、車は徐々に傷ついていく。御鷹が逃げ切るのが先か、あるいは車が大破するのが先か。そこに勝算があろうとなかろうと、今の彼に出来ることは双子を連れて逃げることだけだ。


 やがて、彼の走らせる車が国道の前に差し掛かった時だった。


 突如、灼熱の炎が車を包み込んだ。御鷹はすぐに運転席から飛び降り、後部座席に腰掛けている双子を引きずり出す。そして彼が双子を抱えて地面に転がったのも束の間、車は勢いよく爆発する。これで、彼の逃走の手段は絶たれた。彼が起き上がると、周囲は七体のマグスに囲まれている。絶体絶命だ。


 その時である。


 どこからともなく飛来してきたエネルギーの球体が、マグスたちを一斉に吹き飛ばした。御鷹が唖然とする中、辺りに立ち込める砂煙の中から、眼鏡をかけた女が姿を現す。

「……ここにいたマグスは、計七体。これで今日集まったメディカは、計十一個か」

 先ほどまでマグスたちが立っていた場所に、死体は残されていない。その代わり、御鷹の周囲には七個の宝石が落ちている。女は銃をアタッシュケースに変形させ、宝石を拾い始めた。何やら彼女は、マグスの死後に生成される宝石を集めているようだ。続いて彼女は御鷹たちの方に目を向け、指示を出す。

「ワタシについてきて。アナタたちだけでは、助からない」

 当然、御鷹はこの女の素性を知らない。しかし今は、この女にすがらなければ生き残れないだろう。御鷹は頷き、双子を連れて女についていくことにした。



 それから女は、三人を守りながら戦っていた。彼女は鉄の霧のようなものを操り、それを銃や剣に変形させて戦っているようだ。彼女が炎や冷気、植物などに襲われそうになれば、鉄の霧は盾に変形する。マグスの軍勢に隙が生まれれば、彼女は武器を使って彼らを一掃する。その戦闘能力は常軌を逸しており、御鷹は眼前で繰り広げられる死闘に目を奪われるばかりだ。

「今日は死人も多いけど、メディカも多く確保できるね」

 彼女はそう言いつつ、荒廃した街を淡々と突き進んでいく。向かう所敵なし――――と言ったところだ。


 そんな彼女の無双も、そう長くは続かない。

「ユグドラームの意志のままに!」

 女は背後からマグスの不意打ちを受け、鉄の霧で象られた剣を右手から滑り落としてしまう。彼女とて、武器を失えばただの人間だ。もはやマグスに打ち勝つ術はないだろう。

「しまった……!」

 危ないのは彼女の身だけではない。このままでは、御鷹と双子の命も脅かされるだろう。御鷹は咄嗟に飛び出し、女の落とした武器を拾う。それから瞬きをする間もなく、彼は鉄の剣を勢いよく振る。その切っ先は偶然にも、眼前のマグスのこめかみに的確に切り傷をつけた。

「ユグドラームの……意志のままに……」

 マグスはすぐに制服のポケットから注射器を取り出し、それを自分の腕に突き刺す。そんな彼が立ち上がろうとする間もなく、御鷹はもう一度剣を振り下ろす。

「なっ……⁉」

 畳みかけるような攻撃に対応できず、マグスは斬撃を頭に受ける。彼はそのまま気を失い、一個の宝石に姿を変えた。


 この一部始終を前にして、女は何かをひらめいた。彼女はすぐに立ち上がり、御鷹に声をかける。

「驚いた。アナタ、結構強いみたいだね。もし良かったら、ワタシについてきてくれないかな?」

 その誘いに対し、御鷹は少し怪訝な顔をした。それでも彼には、この女についていく理由がある。

「そうだな。多分、俺一人で行動していても、この街で生き延びることは難しいだろう。とりあえず、話だけでも聞いておくよ」

 彼は女の後についていくことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ